埋伏歯とは、適切な時期を過ぎても生えてこず、歯茎や顎の骨の中に埋もれている歯のことです。歯のすべてが埋もれている(完全埋伏歯)こともあれば、一部が歯茎から出ている(不完全埋伏歯)こともあります。
発生頻度が多いのは、上顎の犬歯や親知らず(智歯)です。これらの歯は、生えてくる時期が他の歯よりも遅いため、埋伏してしまうケースが多くなります。
不完全埋伏歯は、歯が少し見えているので自分で気づくことも多いですが、完全埋伏歯はほとんどの場合自覚症状がなく、歯科医院でレントゲンを撮った際などにはじめて気づくことも。
埋伏歯は、歯の位置や向きによっては、抜歯手術や開窓術、矯正治療などが必要となる可能性が高いです。自分では気づかなかった歯が発見された上に、急に手術といわれたら、ほとんどの方が手術への不安な気持ちと同時に、手術や治療全体にかかる費用を心配されるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、埋伏歯の治療についての情報と、抜歯手術の費用相場、治療費に関する疑問をご紹介します。埋伏歯があると診断された方や、抜歯手術を控えている方はぜひ最後まで読んでみてください。
埋伏歯の治療とは
埋伏歯がある場合、必ずしも抜歯手術をして抜かなければいけないわけではありません。他の永久歯や口の中全体に影響しないと判断されれば、そのままにしておくこともあります。
しかし、埋伏歯が周囲の組織や咬み合わせに悪影響だと判断された場合は、抜歯手術を行うことになるでしょう。ただし埋伏歯の保存が可能であれば、歯茎を切開して骨を削り歯の表面を露出させる「開窓術」や、埋もれている歯を歯列へ引っ張り出す「牽引」などの治療を行い、強制的に萌出させます。
埋伏歯の治療については、こちらの記事でもご紹介しているので、ぜひ参考になさってください。
→「埋伏歯の手術や矯正治療は保険でできる?治療方法や抜歯が必要なケースを紹介」
その後は歯列全体のバランスを整えるために歯列矯正の治療を行うことも多く、治療が長期間にわたるケースもありますが、歯並びを整える重要性を考えると、きちんと最後まで治療を受けることをおすすめします。
永久歯が生えてこないなどの症状がある場合は、まずは歯科医院を受診してレントゲン撮影を行い、埋伏歯がないか確認してもらいましょう。
埋伏歯抜歯手術の費用相場は?
抜歯手術は、埋伏歯の代表的な治療方法です。抜歯するにあたって、痛みへの恐怖感もさることながら、費用への不安も大きいのではないでしょうか。
一般的に、埋伏歯の抜歯手術には保険が適用されます。治療費の自己負担は3割となるため、高額になりすぎることはありませんが、埋伏歯の状態や自費診療の処置を同時に行う場合などは、治療費を全額患者さんが負担することもあります。
埋伏歯の手術は、日帰りで行われることがほとんどです。しかし、手術の難易度によっては、設備の整った医療機関へ入院して手術を行う場合も。
ここでは、埋伏歯抜歯手術の費用相場を、日帰りと入院の場合にわけてそれぞれご紹介します。
日帰りで抜歯手術を行う場合
通常、埋伏歯の抜歯手術を行う場合は問診とレントゲン、CTを使って検査を行い、埋伏歯の位置を確認します。上顎の埋伏歯であれば、即日抜歯することもありますが、埋伏歯の状態によっては、綿密に治療計画を立てた上で別の日にあらためて手術を行うことが多いです。
抜歯手術にかかる費用は、埋伏歯の状態によって、おおよそ以下のようになっています。
- 完全埋伏歯、水平埋伏歯:3,500円程度
- 難抜歯:1,500円程度
- 普通抜歯:800円程度
難抜歯とは、埋伏歯の一部は出ているものの、骨を削る処置や歯を分割する処置が必要になるケースです。骨の中にすべて埋もれているケースが、もっとも費用が高くなります。
上記の金額は、抜歯手術のみの費用です。実際に支払うのは、抜歯にかかる費用の他に初診料や再診料、術前に行うパノラマX線やCTの費用、痛み止めや抗菌薬代などが加算された金額です。
また、顎骨嚢胞摘出などの外科的な処置をあわせて行った場合は、その費用もプラスして支払うことになるでしょう。
すべての費用を合計すると、抜歯手術には5千〜1万円程度かかることになります。
埋伏歯の抜歯手術は、患者さん一人ひとりの口の中の状態によって大きく変動します。費用を事前に知りたい場合は、最初に埋伏歯の状態をレントゲンなどで確認したときに、担当の歯科医師に聞いてみるとよいでしょう。
入院して抜歯手術を行う場合
埋伏歯が骨の深いところに埋もれている、同時に抜歯する歯の本数が多いなどの場合には、数日間入院して抜歯手術を行うこともあります。他にも基礎疾患で薬を内服している方や歯根が肥大している方、癒着している方など、手術の難易度が高くなることが予想される場合も、入院することになるかもしれません。
費用については、手術の難易度や病院の方針によって異なりますが、平均すると3割負担で大体9万円程度になります。ただし、抜歯後に矯正治療を行う場合は、原則として保険が適用されないため、費用はさらに高額になるでしょう。
高額医療費制度を利用すると、限度額を超えた分が返金される可能性もありますので、お住まいの地域の区役所に相談することをおすすめします。
埋伏歯の治療費に関する疑問
歯科医院に限らず、医療機関で受ける治療は、保険が適用されるか否かでかかる費用が大きく違ってきます。埋伏歯の抜歯手術でも、患者さんそれぞれの歯や口の中の状態、基礎疾患の有無などによって治療費が大きく変わることも。
「このくらいで済むと思っていたのに、なぜこんなに費用がかかるの?」など、これまで歯科医院の治療費について疑問を感じた方もおられるのではないでしょうか。
そこでここでは、埋伏歯の治療費に関する疑問を3つご紹介します。
埋伏歯の抜歯手術は子供と大人で費用に差はあるの?
上記でご紹介した通り、埋伏歯の抜歯手術は基本的に保険が適用されるので、患者さんは治療にかかった金額の3割を負担します。保険適用内の治療は、費用が一律であるため、子どもか大人かで治療費に差が出ることはありません。
しかし以下の場合は、治療にかかる費用の自己負担額が変わります。
- 70〜75歳未満:健康保険高齢受給者証が交付され、健康保険証と一緒に提出することで2割負担となる(年収370万円以上の場合は3割負担のまま)
- 75歳以上:後期高齢者医療被保険証が交付され、健康保険証と一緒に提出することで1割負担となる(年収370万円以上の場合は3割負担のまま)
- 6歳未満:2割負担(地域によって内容は異なるが、子どもの医療費助成制度で、健康保険が適用される医療費や薬代は無料となる場合が多い)
つまり、基本的には6歳以上69歳以下の方は、保険適用内の治療でかかる費用に差がないということです。
子どもの医療費助成については、上述の通り地域によって内容が異なりますので、お住まいの自治体に確認してみることをおすすめします。
埋伏歯が犬歯の場合は抜歯手術の費用が高くなるの?
埋伏歯が犬歯の場合、歯の向きなどで処置の内容が異なるため、抜歯手術の費用もそれに伴って変動します。
とくに開窓術だけでなく同時に牽引を行う場合、牽引は保険適用外であるため、費用が検査費を含めて10万〜15万円程度になるケースも。牽引は矯正治療の一部に含まれるケースも多く、開窓、牽引後の矯正治療を含めると80〜100万円程度になることも多いです。
歯科医院の多くは、高額な治療費が患者さんの負担にならないように、分割払いなどに対応しています。費用に不安がある方は、検査で埋伏歯が確認されたときに相談してみるとよいでしょう。
埋伏歯の抜歯手術の費用は医療保険の給付対象になるの?
医療保険から抜歯手術へ手術給付金が支給されることは、基本的にありません。以前は歯科治療でも給付金が支払われる医療保険もありましたが、現在ではどの保険会社でもそのようなプランは取り扱わなくなっています。
ただし、手術の内容によっては加入している医療保険で給付金が出ることもあります。以下は、埋伏歯の抜歯手術で給付金が支払われる可能性のあるケースの例です。
- 埋伏歯が前歯3本以上で開窓術が必要な場合
- 水平埋伏歯で骨の削除が必要になる場合 など
犬歯が埋伏歯の場合は、それを前歯と捉えるかどうかで判断がわかれます。保険会社ごとに判断は違いますので、念の為問い合わせてみるとよいでしょう。
まとめ
埋伏歯の治療についての情報と、抜歯手術の費用相場、治療費に関する疑問をご紹介しました。
埋伏歯の治療には、抜歯手術や開窓術、牽引、矯正治療などがあります。基本的に抜歯手術と開窓術は健康保険の適用内であるため、かかる費用の3割負担で行えます。
ただし、埋伏歯の状態などによっては入院して手術を行うケースも。そのため、費用が心配な方は、担当の歯科医師が埋伏歯の状態を確認してから、治療方針とともに費用についても相談してみましょう。
当院では、精密な診断と幅広い方法で患者様に寄り添った治療を行っております。当院から歩いて5分のところにある「秋葉原総合歯科クリニック」と連携し、患者様一人ひとりに最適な治療をご提供いたします。
埋伏歯の可能性がある方は、日本矯正歯科学会の認定医が多数在籍する「千代田区の矯正歯科専門・末広町矯正歯科」まで、ぜひお気軽にご相談ください。