歯列矯正は、従来ワイヤーやブラケットを用いた矯正が主流でしたが、矯正中の審美性や取り外せる手軽さから、現在ではマウスピースを用いた”マウスピース型矯正装置”も随分と普及してきました。
適切な矯正方法の選択は歯列の状態に大きく依存しますが、慣れない矯正装置が長期間に亘って口の中にあるため、矯正を行っている方には身近なトラブルとして”口内炎”が起こることがあります。
口内炎は矯正器具が原因となってできることもあれば、日常生活の不摂生がたたってできることもあります。むしろ、多くの方にとっては後者の原因が身近に感じられるかと思います。
しかしながら、口内炎ができやすい生活を送っている中で、矯正器具による刺激でさらに治りが遅くなくなるという問題も発生してしまいます。
この記事では、口内炎ができる仕組みや、口内炎の改善方法、マウスピース型矯正中における口内炎への対処方法に関してご説明していますので、ぜひ最後までご覧になってみてください。
歯列矯正中は口内炎ができやすい?
口内炎とは、口内粘膜の一部が赤く腫れたり、水ぶくれになったりする状態のことを指しています。冒頭でも触れたように、口内が起きる原因には生活の不摂生からはじまり、ウイルス性・アレルギー性のものまであります。一方で、歯列矯正によってできる口内炎の多くは矯正装置が口内粘膜に刺激を与えてしまうことに原因があるものがほとんどです。
従来のワイヤー矯正(マルチブラケット法)では多様な歯列の状態に幅広く対応できる一方で、口内に装着されるワイヤーとブラケットが口内粘膜に常に触れる状態となるため、口内炎が起こりやすいという側面も併せ持っていました(※)。
しかしながら、マウスピース型矯正装置であれば、歯全体に覆いかぶさるようにマウスピースを装着することとなるため、ワイヤー矯正と異なり、口内粘膜の特定の部分に刺激が与えられることも少なく、比較的、口内炎は起こりにくいといえます。
また、口内粘膜に刺激を与える装置も、ワイヤー矯正では金属などの硬い素材から作られていることが多いため、これも刺激を与えやすい原因となっているといえます。一方のマウスピース型矯正装置で用いるマウスピースは、ワイヤーと比較して柔らかい素材で作られているため口内炎の起こりにくさに大きく関係しているといえます。
※口内炎が起こりやすい特徴があるのは事実ですが、治療が進んで歯列の形が整っていくことで、口内炎が起こる頻度が低下していくともいわれています。
口内炎が起きる原因
口内炎が起きる原因には、これまでに触れたように様々あるのですが、ここでは”矯正器具が原因となって生じる口内炎”と、”矯正器具以外が原因となって生じる口内炎”の2つに分けてご説明していきたいと思います。
矯正器具が原因で生じる口内炎
このような口内炎は「カタル性口内炎」とも呼ばれています。矯正装置が口内の粘膜に触れ、傷をつけることによって生じる口内炎です。口内粘膜に刺激を与えてしまうものには矯正装置だけでなく、歯の被せ物や入れ歯などもあります。これらは患者さんのお口に適切に合っていない場合などに起こります。
また、マウスピース矯正における口内炎のほとんどは、マウスピースの辺縁(マウスピースのフチ部分)が尖っていることで、口内粘膜に刺激を与えて生じるパターンです。そのため、マウスピースを装着したときに、マウスピースのフチが触れる唇の内側や頬の粘膜、舌に多く見られます。
カタル性口内炎のチェックポイント
以下の症状が確認される場合にはカタル性口内炎である可能性が高いです。無理に我慢なさらず、治療中の歯科医院に相談し、改善を図ってみてください。
- 口内粘膜が部分的に腫れ、赤くなっている
- 腫れている部分に熱を感じる
- 水ぶくれができている
- 普段より唾液の量が増えた・粘り気が強くなった
- 口内炎が発症している患部と、それ以外の境界線が視認しづらい
- 味覚を感じにくくなった
- 口臭がきつくなった
矯正器具以外に原因がある口内炎
矯正器具以外が原因となって起こる口内炎にはさまざまなタイプがあります。矯正中にできた口内炎がカタル性口内炎である可能性は十分に考えられますが、生活習慣に乱れなどがあれば他のタイプの口内炎ができることもあります。
不摂生な生活を送っていると、なおのこと口内炎ができ余計なストレスを感じるうえに、治りも遅くなってしまいます。
ここでは、そのようなカタル性口内炎以外の口内炎に関して見ていきましょう。
アフタ性口内炎
数ミリほどの丸くて白く、その周囲が赤みを帯びた状態が見られる口内炎です。この口内炎は日々の疲れやストレス、ビタミンB2などの栄養分が不足することでできるとされています。
潰瘍性(かいようせい)口内炎
粘膜の表面に潰瘍(部分的な細胞組織の欠損によって、その部分にて壊死が起こり、壊死した組織が脱落または融解して生じるもの)ができ、これが白い膜で覆われる状態が確認される口内炎です。
カンジダ性口内炎
口の中に存在する常在菌の一種であるカンジダ菌(カビ菌の一種)が、口内環境の悪化によって増殖し、口内炎となったものです。
ウイルス性口内炎
ヘルペスやクラミジアなどのウイルスの感染によってできる口内炎です。口の中に水ぶくれができ、これが破れ、かさぶたができあがるという特徴があります。
アレルギー性口内炎
金属アレルギーを持っている人にできる口内炎で、歯の被せ物などに用いられている金属に体が反応して、金属との接触部分やその周囲が赤く腫れる特徴があります。アレルギー性のものであるため、アレルギー反応が口内炎という形だけでなく、身体各部の腫れや全身のかゆみとなって現れることもあります。
マウスピース型矯正中の口内炎の対処法
次に、マウスピース矯正中に口内炎ができた場合の対処法に関して見ていきましょう。主な対処法には、以下のものが挙げられます。
- 矯正用のワックスを使用する
- 口内炎用の市販薬を用いる
それぞれについて確認していきましょう。
矯正用のワックスを使用する
口内炎のタイプがカタル性口内炎である場合には、矯正用ワックスを用いるのが効果的です。矯正用ワックスとは矯正器具を覆う粘土のようなもので、口内粘膜と接触してしまっている矯正器具の部分に押し付けて使用します。ワックスを用いることで装置と粘膜の接触を防ぐことができ、口内炎の痛みを緩和することはもちろん、口内炎の再発を防ぐことにもつながります。
口内炎用の市販薬を用いる
カタル性口内炎のみを対象とした方法ではありませんが、口内炎全般に対する対処法として、市販薬を用いることもあります。市販薬にはさまざまなタイプがあり、以下のものが挙げられます。
■軟膏タイプ
軟膏タイプの薬品は薬品そのものの粘度が高いため、唾液の分泌がある口内でも患部に長く留まり効果を発揮していきます。軟膏を患部に直接塗って使用します。
■貼るタイプ
口内炎に触れることで痛みが走る場合には、貼るタイプの市販薬がおすすめです。口内炎全体を市販薬そのもので覆ってしまうことで口内炎への刺激を防ぎ、炎症を鎮めていきます。
■スプレータイプ
口内炎ができた部分が口の奥など、軟膏タイプ・貼るタイプの薬を使用しにくい場合には、スプレータイプをおすすめします。ある程度の範囲に薬品を散布するため、患部を確認しづらい場合であっても処置しやすいです。
口内炎を予防する体質改善
口内粘膜と矯正装置との物理的な接触などによって起こるカタル性口内炎を防ぐことはなかなか難しいですが、口内炎ができにくい体質にしておくことは、口内炎の発症そのものを減らすことはもちろん、口内炎の発症から鎮静までを早めることも期待できます。
口内炎を予防する方法としては、①バランスの整った食生活、②清潔な口内環境の維持が挙げられます。
まずは①に関して、ヒトの体はさまざまな栄養素から作られていますが、代謝や粘膜維持に関わる栄養素などが不足すると口内炎が起こりやすくなるといわれています。これらの代表的な栄養素には、ビタミンB2やビタミンB6、ビタミンA、ビタミンCが挙げられます。矯正期間中は、これらの栄養素を積極的に摂取するように意識してみてください。サプリメントを利用することで継続的な摂取も容易になります。
次に②に関して、マウスピース矯正は矯正装置の付け外しが可能であるため、ワイヤー矯正と比較して、日々の歯磨きが容易であり口内環境が悪化することは少ないですが、それでも口内環境が悪ければ口内炎をもたらすことがあります。食事中はマウスピースを外しますが、再度、装着する前の歯磨きを丁寧に行うことはもちろん、殺菌成分入りの洗口液、歯間ブラシなども活用し、細菌の増殖・繁殖を抑えるように気をつけるようにしましょう。
まとめ
ここまで、歯列矯正と口内炎に関してご紹介してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
マウスピース型矯型は従来のワイヤー矯正と比較して、口内炎ができにくい矯正方法であるといえますが、決して”口内炎ができない”というわけではありません。
日頃から口内炎ができにくい生活習慣を心掛け、快適に矯正治療を進めていきましょう。
当院では、日本矯正歯科学会の認定医が多数在籍しており、高い技術力で最適な矯正治療を提供しております。
土日も診療を行い、末広町駅徒歩10mとアクセスもよいため、矯正期間中にに口内炎等のトラブルがあったときも安心です。
マウスピース矯正に興味がある方は、ぜひ一度「千代田区の矯正歯科専門・末広町矯正歯科」までご相談ください。