人間の歯は乳歯が20本、永久歯は親知らずを含めて最大32本です。これ以上存在する歯を「過剰歯」と呼びます。
過剰歯が生える原因についてはいまだにはっきりとわかっていませんが、生えている位置や向きによっては残しておくと他の永久歯の成長を阻害したり、虫歯のリスクを上昇させたりするため、抜歯手術をして取り除いてあげる必要があります。
子どもが抜歯手術を行う際、親御さんがまず気になるのは「痛み」についてです。
大人でも親知らずなどで抜歯を行ったあと、痛みや腫れに悩まされた方も多いです。そのような経験をした方はとくに、子どもに同じような思いをさせたくないと思われることでしょう。では、過剰歯の抜歯で痛みを感じるのは、一体どのようなタイミングなのでしょうか。
そこでこの記事では、過剰歯の治療法と子どもが過剰歯の抜歯で痛みを感じるタイミング、過剰歯を放置するデメリットについてご紹介します。
過剰歯の治療法とは
過剰歯は、上の前歯の間にできるケースがほとんどで、前歯が片方生えてこなかったりすきっ歯になったりすることも。永久歯の生え変わり時期に歯並びの問題で歯科医院へ相談に行き、そこで検査をした結果、過剰歯が発見されることも少なくありません。
冒頭でもご紹介したように、過剰歯は抜歯して取り除くことも多い歯です。では、具体的に過剰歯の治療とはどのように行われるのでしょうか。ここでは、過剰歯の治療法について詳しくご紹介します。
過剰歯は抜歯が基本
過剰歯の治療法は、以下の3つです。
- 抜歯
- 歯茎を切開して抜歯(過剰歯が埋伏している場合)
- 経過観察
基本的に、過剰歯は抜歯手術で取り除きます。他の永久歯と同じ向きに生えている順生の過剰歯であれば、比較的簡単に抜くことが可能です。この場合は、早めに抜歯しておくことで、これから生えてくる永久歯への影響を少なくできます。
過剰歯が顎の骨の中に埋もれている埋伏歯の場合は、歯茎を切開する開窓術を行い、顎の骨を削って抜歯を行います。過剰歯の埋もれている位置を確認し、早期に抜歯するか永久歯が生えそろうのを待つか判断することになるでしょう。
経過観察は、過剰歯が口の中に悪影響を及ぼさないと判断された場合や、歯茎を深く切開しなければいけない場合などに行われることが多いです。定期的に歯科医院で検診を受けて、過剰歯の状態に変わりはないか確認します。
抜歯後矯正治療が必要な場合も
過剰歯は、上の前歯の間にできることが多いため、すきっ歯になったり歯並び全体がガタガタになったりする方も多いです。子どもの歯並びや咬み合わせが気になり受診したところ、レントゲンでたまたま過剰歯が見つかるというケースもよくあります。
すでにすきっ歯になっている、前歯が曲がって生えてきたなどの場合には、過剰歯を抜歯した後に矯正治療で歯並びや咬み合わせを整えていくことになるでしょう。
また、これから生えてくる永久歯の歯並びが悪くなる可能性がある場合にも、抜歯後経過を観察しながら矯正治療の開始時期を検討します。
子どもの矯正治療では、歯並びや咬み合わせだけでなく、顎の骨の成長を促進し、歯が生えるスペースを確保することも可能です。
通常の場合、子どもの矯正では固定式の装置ではなく、取り外し式の装置を使用します。最近では、マウスピース型の矯正装置も登場しており、透明で目立たない種類のもので治療ができます。
ただし、歯の移動量が多いときは、よく矯正装置と聞いてイメージされるワイヤー矯正が選択されることも多いです。子どもの歯並びが気になる場合は、過剰歯の可能性も考えて早めに歯科医院へ相談に行くようにしましょう。
子どもが過剰歯の抜歯で痛みを感じるタイミング
「過剰歯の抜歯が必要」そのように歯科医師にいわれた親御さんの中には、小さな子どもに抜歯手術を受けさせることに抵抗がある方も少なくありません。
「危険ではないのか」「痛みはいつ出てどのくらい続くのか」など、さまざまなことに不安を感じてしまうことでしょう。しかし、歯科医師が過剰歯の抜歯を提案したということは、抜歯をした方がよい状態なのです。
そこでここでは、子どもの過剰歯の抜歯で、親御さんが不安に感じやすい「痛み」を感じるタイミングや期間についてご紹介します。
術中は痛みを感じない
過剰歯を取り除く抜歯手術は、局所麻酔を施して行う小手術です。そのため、麻酔がしっかりと効いていれば、術中に患者さんが痛みを感じることはありません。
手術と聞くと、とても大掛かりなものを想像してしまいますが、抜歯手術は歯科医院で行われる頻度の高いものなので、心配しすぎないようにしましょう。
以下は、過剰歯の一般的な抜歯手術(過剰歯が完全に埋伏している場合)の手順です。
- レントゲンやCT画像から過剰歯の正確な位置を確認
- 歯肉の切開線を設定
- 患部に局所麻酔を施す
- 歯肉を剥離する
- ノミで骨を削って過剰歯を露出させる
- 過剰歯を抜歯する
- 歯肉を元の位置で縫合する
過剰歯が順生で他の永久歯と同じように歯茎から頭を出している場合は、歯肉を切開したり骨を削ったりする必要はありません。ただし、あくまで外科的な処置を行う小手術ですので、可能であれば抜歯手術の経験が豊富な歯科医師に診てもらった方がよいでしょう。
また、治療中に泣いてしまう、治療に協力できない子どもの手術では、全身麻酔下で抜歯の手術を行うことがあります。
痛むのは術後2〜3日
大掛かりな手術にならない限り、抜歯自体はほんの数分で終わります。
しかし、親知らずの抜歯と同じように、過剰歯を抜いた後は2〜3日痛みが出ることも多いです。とくに手術翌日は、痛みが強めに出る可能性もありますので注意が必要です。
術中は麻酔も効いているため痛みませんが、麻酔が切れると徐々に痛みが出現します。腫れは手術の翌日から3日目くらいまで続くこともあり、骨を削るような手術で現れることが多いです。
稀に抜歯当日に発熱することもあります。2〜3日しても熱が下がらない場合は、感染の可能性もありますので、手術を行った歯科医院へ連絡してください。
また、麻酔による痺れなどは、手術当日でほとんど回復します。極めて稀に、麻酔の針が神経に刺さり、神経損傷を引き起こすケースもありますが、自然に回復していくことが多いでしょう。
術後数日の間は、トーストや衣のついた揚げ物などは食べないように指導されることも。これは、抜歯した傷口に硬いものが刺さったり入ったりしないようにするためです。
給食などでも食べられないものが出てくる可能性もありますので、学校や保育園に連絡しておくことをおすすめします。学校が長期休暇の間に手術を受けることも検討するとよいかもしれません。
術後の痛みは内服薬でコントロール
過剰歯の抜歯後の痛みは、一般的に「アセトアミノフェン」の内服薬でコントロール可能です。
よく使用されるのは「カロナール®︎」という薬で、親知らずの抜歯をした際にも痛み止めとしてよく処方されます。アセトアミノフェンは、術後の痛み止めとして安全かつ有効な薬だといわれています。
また、化膿止めとして抗生物質を一緒に処方されることもあります。痛み止めは痛みがなければ服用する必要はありませんが、抗生物質は化膿を予防するための薬なので、処方された分量をきちんと決められた時間に飲むことが重要です。
術後は、血行を促進するような行動は控える必要がありますので、手術当日はできるだけ安静に過ごし、軽いシャワーで済ませるようにします。
その後の生活や運動については、抜歯手術の程度にもよりますので、担当の歯科医師の指示に従うようにしましょう。
過剰歯を放置するデメリットとは
過剰歯は、子どもの頃に治療を受けずに放置してしまうと、歯並びが悪くなるだけでなく、過剰歯の周りに「嚢胞」という膿の塊ができてしまうこともあります。嚢胞が大きくなると、永久歯の根っこを溶かしてしまう恐れもあり、歯が抜けやすくなってしまうことも。
また、歯並びが悪くなることで虫歯や歯周病のリスクも上昇します。虫歯によって歯の神経が死んでしまった場合、その歯の根っこの近くに過剰歯が埋まっていると、過剰歯まで細菌に感染し、強い痛みや腫れが出る可能性もあります。
大人になってから過剰歯を抜歯しようとすると、子どもよりも大掛かりな手術が必要になるだけでなく、痛みも強く術後の治りも遅いです。
さらに、矯正治療も必須となります。大人の矯正治療は、長期間かかる上に費用も高額になることが多いです。治療にかかる期間や費用面からみても、過剰歯は子どもの頃に治療しておくことをおすすめします。
まとめ
過剰歯の治療法と子どもが過剰歯の抜歯で痛みを感じるタイミング、過剰歯を放置するデメリットについてご紹介しました。
過剰歯に限らず、子どもが抜歯の手術を受けるのは心配なものです。しかし、過剰歯を放置しておくことのデメリットを考えると、歯科医師の提案を受け入れて手術を受けさせた方がよいでしょう。
その際は、矯正歯科専門医院を受診することをおすすめします。矯正歯科医院では、歯並びや咬み合わせの専門医が口の中を確認し、必要であれば抜歯をしてその後の治療方法を提案します。
抜歯についても、口腔外科での処置が必要だと判断すれば、口腔外科と連携して手術を行うので、安心して治療を受けられるでしょう。
精密な診断と幅広い治療法をご用意して、患者様をお待ちしておりますので、お子様に過剰歯の可能性がある場合は、ぜひ一度「千代田区の矯正歯科専門・末広町矯正歯科」にご相談ください。