「過剰歯」という言葉をご存知ですか?
過剰歯とは、普通に生える歯の本数よりも多く生えている歯のことです。歯科医院でレントゲンを撮った際に偶然見つかったり、永久歯がなかなか生えてこないことから疑われたりします。
他の永久歯に悪影響を及ぼさない場合は抜歯せず経過を観察することもありますが、多くの場合、過剰歯が他の永久歯の萌出を阻害したり歯並び全体にまで影響が及んだりするため、抜歯の手術を受けることになるでしょう。
過剰歯があることは、それほどめずらしくありません。そのため、基本的に過剰歯の抜歯手術は外来にて局所麻酔を施して行われます。
しかし中には、全身麻酔下で手術を行うケースもあります。突然「全身麻酔で手術を行いましょう」といわれたら、ほとんどの方が不安を感じるのではないでしょうか。
そこでここでは、全身麻酔の詳細と過剰歯で全身麻酔が必要なケースを子どもと大人にわけてそれぞれご紹介します。
全身麻酔とは
全身麻酔とは、静脈内に麻酔薬を投与し、全身の痛みや感覚を麻痺させる方法です。全身麻酔というと、医科で行われる外科手術をイメージしますが、実は歯科でも全身麻酔下で手術を行うことがあります。
長時間の治療も眠ったまま受けられるので、一度に多くの治療ができるほか、通院回数を少なくできる場合も。ここではまず、全身麻酔についての詳細をご紹介します。
安全性について
全身麻酔で手術を行うと聞いて、はじめに心配するのは「安全性」についてという方も多いのではないでしょうか。
全身麻酔に使用する麻酔薬は、基本的に乳幼児から高齢者などあらゆる方に対して安全です。
全身麻酔下で行われる手術では、極めて少ない確率で起こる危険な状況をいち早く察知できるよう、麻酔科医が常に監視しているため、安心して手術を受けましょう。
全身麻酔の方法
過剰歯の手術で全身麻酔を施す場合、マスクで吸引するか静脈麻酔薬を点滴で入れるかして入眠します。
全身麻酔中は、気道の確保が必要です。主に以下のいずれかの方法で気道確保が行われます。
- 経鼻気管挿管:鼻から気管まで細い管を挿入する方法
- ラリンジアルマスク:小さなマスクを喉の奥まで挿入して気管の入り口を覆う方法
- 経鼻エアウェイ:鼻から喉の奥まで細い管を挿入する方法
患者さんの呼吸力や麻酔方法、手術の内容、手術にかかる時間などを考慮して選択することになります。
気道確保に用いられるのは、やわらかいビニールやシリコンでできたマスクやチューブです。喉に傷がつくことを懸念される方もいますが、そのような心配はいりませんので安心してください。
局所麻酔との違い
全身麻酔は全身に麻酔を施すため、脳の意識まで消失します。また、患者さんは自発呼吸(自分自身で呼吸を行うこと)を止めるため、気道を確保して呼吸を管理しなければいけません。
一方の局所麻酔は、手術する部位やその部分に痛みを伝えている神経の付近のみに、注射によって麻酔をかけます。一般的に、小さい手術で使用されることが多いです。
歯科で全身麻酔を使用するケースはあまり多くありませんが、局所麻酔よりも安全に手術を行える場合もあります。
過剰歯の手術は抜糸が必要
過剰歯の手術は、歯肉を切開して剥がし骨を削って過剰歯を抜くため、術後に抜糸が必要です。とくに全身麻酔が必要な場合は、手術自体の難易度が高いことも多く、広い範囲を縫合していることも。
一般的に、過剰歯の手術では1〜2週間後に抜糸されます。
抜糸の処置は、縫合糸をハサミで切って患部を消毒します。処置にかかる時間も短いので、学校や仕事を丸一日休まなくて済むでしょう。
過剰歯で全身麻酔が必要なケース【子どもの場合】
過剰歯は、子どもの頃に発見されることがほとんどです。
抜歯の時期は6歳前後が望ましいといわれており、小学校へ上がる頃に手術が行われるケースも多いです。多くの場合、過剰歯の抜歯手術は局所麻酔で行われますが、子どもの場合は全身麻酔を施すことも少なくありません。
「大学附属病院小児歯科における7年間におよぶ過剰歯の実態調査」によると、全身麻酔で抜歯を行ったケースが全体の44%であったと報告がされています。
では、子どもの過剰歯で全身麻酔が必要なケースとは、どのような場合なのでしょうか。
歯科医院に対する恐怖心が強い
本来、抜歯の手術というのは麻酔がしっかりと効いていれば、痛みを感じることはありません。しかし、歯科医院への恐怖が強い子どもの場合、局所麻酔の注射ですら行うのは大変です。
過剰歯を抜歯する時期については、子どもの協力状態などを踏まえて考慮しますが、早めに抜歯した方がよい症例や処置が難しい場合については、全身麻酔で手術を行うことになります。
ただし、全身麻酔の手術を行うためには、術前にさまざまな検査をする必要がありますので、そちらをクリアしなければいけない点に注意が必要です。
過剰歯が難易度の高い位置にある
過剰歯は、上顎の前歯の真ん中にできることが多いですが、他のどの位置にもできる可能性があります。また、過剰歯が生える本数は、1本の場合もあれば2本や3本、他の疾患によって4本以上存在することも。
全身麻酔下での抜歯手術が行われることが多いのは、過剰歯の位置が深めで局所麻酔が効きにくい位置にあるケースです。とくに過剰歯が通常の永久歯とは反対を向いている、すべてが顎の骨の中に埋もれている場合などには、全身麻酔下で抜歯の手術を行うことが多くなります。
このようなケースでは、抜歯の処置後に永久歯の萌出遅延や捻転、正中離開などの問題がみられることも少なくありません。永久歯がきちんと生え揃うまでの間、定期的に経過観察を行う場合もありますので、歯科医師の指示に従いましょう。
過剰歯で全身麻酔が必要なケース【大人の場合】
過剰歯は大人になってからみつかったり、存在は認識していたものの、経過観察の末に抜歯の手術が必要になったりすることもあります。また、矯正治療を行う際や義歯を入れる際に妨げになるような場合も同様です。
大人の過剰歯も、基本的には外来で局所麻酔を用いて抜歯手術を行います。しかし中には、全身麻酔が必要なケースも当然存在します。
それは一体、どのようなケースなのでしょうか。ここでは、大人の過剰歯で全身麻酔が必要なケースについて具体的にご紹介します。
基礎疾患がある
年齢を重ねると、全身にさまざまな疾患を抱えている方も増えてきます。基礎疾患の種類によっては、全身麻酔下での抜歯手術を提案されるでしょう。
また、心身に障害がある方の手術も、全身麻酔下で行った方が安全です。
とくに知的発達遅延や脳性麻痺などを合併している方、糖尿病や腎疾患などの方は、設備の整った医療機関で手術を受けることをおすすめします。
また、パニック障害などを患っている方や、歯科医院にトラウマがある方に対しても、全身麻酔で精神的な不安を取り除いた手術が行われる可能性もあります。
無意識の状態で嫌な記憶を残さずに治療が受けられるので、パニック障害やトラウマをお持ちの方は、歯科医院で相談してみるとよいでしょう。
過剰歯が骨の深くに埋まっている
大人の場合、子どもと比べて骨が固くなっており、出血が多かったり手術の難易度が上がったりするケースも多くなります。すでに骨が固まってからの抜歯手術は、骨格や永久歯にも影響が出る可能性も高いため、過剰歯は早期発見早期治療が重要だといわれているのです。
大人の場合、骨の深くに過剰歯があると手術時間が長くなります。また、難易度から考えても、全身麻酔下で手術を行った方が安全であるといえるでしょう。
全身麻酔は、日帰り手術で使用することも可能ですが、入院下で行うことで止血管理を徹底し、病状に適した食事が提供されるので、自宅にいるよりも安全だからと入院を希望する方もいます。入院しての抜歯を希望される場合は、入院設備の整った医療機関へ相談に行ってみることをおすすめします。
まとめ
全身麻酔の詳細と過剰歯で全身麻酔が必要なケースを、子どもと大人にわけてそれぞれご紹介しました。
過剰歯は、基本的に局所麻酔を施して抜歯手術を行いますが、今回ご紹介したようなケースでは、子どもも大人も全身麻酔下で手術を行うこともあるでしょう。
ほとんどの患者さんは、全身麻酔下で過剰歯の手術を行っても、翌日から普段通りの生活に戻れます。しかし、体調が戻りきらない可能性もあるため、できるだけゆっくり過ごすことをおすすめします。
全身麻酔は、麻酔後しばらくの間倦怠感などが生じる可能性もありますので、術前はできるだけ体調を整えて手術を受けるようにしましょう。
当院では、治療の事前説明を重視しており、患者様がきちんとご納得された上で治療を受けていただくよう努めています。
当院より歩いて5分のところにある「秋葉原総合歯科クリニック」(本院)と連携することで、抜歯や虫歯治療などさまざまな患者様に対応できるシステムとなっております。
過剰歯の治療をお考えの方は、ぜひお気軽に「千代田区の矯正歯科専門・末広町矯正歯科」までご相談ください。