大人になったときの顔つきにも影響を与える可能性のある反対咬合。
歯並びによる心身への影響が大きいだけでなく、「しゃくれている」などとからかわれる可能性もあるので、子供が反対咬合であることに気づいた親御さんの多くは、非常に心配されていることでしょう。
反対咬合は、歯並びや咬み合わせの状態がよくない子供の不正咬合の中でも、とくに早期の治療が効果を発揮する症状です。上下の咬み合わせが通常とは逆になっているため、大人になるまで放置すると、骨の形まで変わってしまいます。
大人になってしまうと変形した骨の形は元には戻せません。子供のうちだからこそ、治療の効果を得やすいといえるのです。
この記事では、子供の反対咬合の症状や原因などの詳細と、時期別の治療法をご紹介します。子供の反対咬合が気になっている方、治療を検討している方はぜひ最後まで読んでみてください。
子供の反対咬合とは
日本人は、骨格的に上の顎に対して下の顎が大きいケースも多く、白人と比べて反対咬合になりやすいといわれています。
乳歯が生え揃った3歳頃から、少しずつ反対咬合の子供が出てきます。親御さんが自分で気づくケースもありますが、3歳児検診で指摘されて歯科医院へ相談にいくケースがほとんどです。
ここではまず、子供の反対咬合の詳細をご紹介していきます。
症状
反対咬合とは、咬み合わせが通常とは逆になっている状態のことで、「受け口」と呼ばれることもあります。歯を咬み合わせたときに、下の前歯が上の前歯よりも前に出ているのが特徴です。
成長期に反対咬合を放置してしまうと、骨格性下顎前突という難しい症例にまで進行してしまう恐れがあります。この状態になると、外科手術を行って顎の骨を切断して下顎を後ろに下げる治療を行うこともあるので、早めの治療をおすすめします。
以下は、反対咬合の具体的な症状です。
- 上の前歯が後ろで、下の前歯が前に咬んでいる
- サ行やタ行の発音が独特になる発音障害が出る
- 舌足らずで発音が不明瞭
- 徐々に顎が前方へ出てくる
- 食べ方や噛み方がおかしい
歯並びや顔の形など、目に見えるところだけでなく、口の機能などにまで症状が出ることもあります。程度にもよりますが、早めに治療を開始することで、十分に改善が可能です。
原因
反対咬合の原因の多くは、遺伝などの先天的な問題です。それ以外にも、顎を前に突き出したり、舌で下の前歯を押し出したりする癖、鼻疾患による口呼吸などによって反対咬合になる可能性があります。
どの原因にも共通しているのは、「舌」の運動に問題があることです。
人間は本来、食べ物を飲み込む際に舌の先端が上顎の前歯の後ろあたりにくっつきます。そして舌が上顎を前や横に押し広げることで飲み込んでいるのです。
1日の中で、この動きを平均で1,200回から2,400回繰り返しながら生活しているといわれており、正しい舌の動きで飲み込むことで、顎周辺が鍛えられ理想的な顎へと成長していきます。
反対咬合の子供の多くは、この舌の動きが上手にできません。舌の先端が下の前歯の後ろに位置する「低位舌」と呼ばれる状態になることが多く、歯や顎の成長に影響を与えます。そのため下の前歯が上の前歯より前に出てきてしまうのです。
リスク
反対咬合の発生頻度は、子供の不正咬合の問題のうちおよそ2%です。それほど高くはありませんが、そのまま放置してしまうと以下のようなリスクがあります。
- 虫歯や歯周病になりやすい
- 顎の骨が変形する
- 下顎が前に突き出てくる
- 顎関節症のリスクが高まる
- 前歯を早期に喪失する可能性が高まる
- 関節痛や肩こり、腰痛などの可能性が高まる
- 自律神経失調症や不定愁訴のリスクが高まる
下顎は、長管骨という骨の一種です。身長が大きく伸びる成長期とともにぐっと成長して前に突き出てくる可能性があるため、早めに治すことが大切です。
子供の反対咬合に対する時期別の治療法
子供の反対咬合に対する治療は、原因や診断されたタイミングなどによって異なってきます。ただし、反対咬合は他の症例と比べて早めの治療で大きな効果を得られるので、治療開始のタイミングを歯科医師と十分に話し合わなければいけません。
ここでは、子供の反対咬合に対する時期別の治療法についてご紹介します。
乳歯列期
従来、乳歯列期の反対咬合は、治療をせずに経過をみることも多くありました。なぜなら、永久歯が生える際に反対咬合が自然と治るケースや、早く治療を行っても再び反対咬合の症状が現れるケースもあるからです。
以下は、乳歯列期の反対咬合を治療する方法の例です。
- 筋機能療法(MFT)
- 拡大装置、急速拡大、拡大床
- 歯列矯正用咬合誘導装置(ムーシールド)
乳歯が生え揃っていない1歳から2歳頃までは、反対咬合の症状があっても自然に治る確率が高いといわれているので、様子をみるケースもあります。しかし3歳をすぎて乳歯が生え揃った段階でも症状がみられるようであれば、治療を開始したほうがよいでしょう。
混合歯列期
乳歯と永久歯が混在する混合歯列期に発生する反対咬合は、上顎の成長不足が原因であることも多いです。そのため、この時期の反対咬合の治療は、顎を広げることに重点を置くことになります。
以下は、混合歯列期の反対咬合を治療する方法の例です。
- チンキャップ
- 上顎前方牽引装置
- 拡大装置、急速拡大、拡大床
- インビザラインファースト(マウスピース型矯正装置)
顎の成長や歯の生え変わりによって、かなりダイナミックに歯並びや咬み合わせが変化する時期です。上顎の成長は、10歳程度でほとんどストップするので、それまでの間に治療を開始するのが望ましいでしょう。
最近では、透明で目立たないマウスピースを装着するだけで、徐々に反対咬合を改善できるようになりました。顎の成長をサポートする治療と、歯並びを同時に治療できるので、新たな子供の不正咬合の治療法として、注目されています。
ただし、すべての症例に適応しているわけではないので、使用できるかどうかは歯科医師の判断によります。
永久歯列期
すべての歯が生え変わり永久歯期に入ると、自然治癒は望めません。骨格面での治療は難しくなりますが、その反面、歯の移動を予測することが容易になるため、治療の計画を立てやすくなります。
以下は、永久歯列期の反対咬合を治療する方法の例です。
- ワイヤー矯正
- マウスピース矯正
- 外科手術
この時期になると、ワイヤー矯正が使用可能になります。ワイヤー矯正とは、歯の表面にブラケットという金属の装置を装着し、ワイヤーを通して行うもっとも一般的な治療です。
永久歯列期になると、自分の見た目を気にする子供も増えるため、できるだけ目立たない矯正装置を希望される場合があります。しかし、ブラケットとワイヤーを歯の裏側に装着する裏側矯正は、装置が外れやすくなってしまうため、反対咬合の治療ではおすすめできません。
症例によっては使用できませんが、マウスピース矯正でも治療可能なケースもあるので、歯科医院で相談してみるとよいでしょう。
また、成長期が終了すると外科手術が可能となります。下顎が著しく前へ出ている場合などは、外科手術を併用した矯正治療を行います。
治療後も定期健診を受けましょう
反対咬合はほとんどの場合、歯列矯正で治療が可能です。ただし、反対咬合の原因となるような日常の癖を治さない限り、一度治っても成長とともに再発しやすくなるので注意しなければいけません。
歯列矯正などで治療が完了したあとも、3ヶ月から半年に1度は定期健診を行い、歯科医師にチェックしてもらうようにしましょう。
再発率の高さから、大人になってからの治療を勧める歯科医師もいます。しかし、大人になると外科手術や抜歯が必要になる可能性もぐっと高まります。
治療を先延ばしにするような提案をされた場合は、本当にそれでよいのか、どのような予定で治療を行うのかについてしっかりと説明してもらうことが大切です。
まとめ
子供の反対咬合の症状や原因などの詳細と、時期別の治療法をご紹介しました。
反対咬合は上顎の前歯が下顎の前歯よりも内側にあります。反対咬合自体が上顎の発育を邪魔してしまうという事態が起こってしまうため、早めの治療が大切です。
自然に治る確率は、3歳頃に指摘された子供のうち6%と非常に低いです。
大人で反対咬合の方は、見た目が悩みになってしまうこともあります。健康面においても、前歯を早期に喪失するケースが多くなるので、さらに発音が不明瞭になってしまうことも。
両親や親戚に反対咬合の方がいる場合や、上の歯よりも出てしまっている下の歯の本数が多い場合、咬み合わせが深い場合などは、きちんと治療を受けるようにしましょう。
当院では、患者様一人ひとりの症状に合わせて一つの方法にこだわらない治療を行っています。口腔内スキャナーを使用して虫歯をチェックいたしますので、お子様がレントゲンによる放射線を浴びることに不安を感じている親御さんも安心です。
親御様がご納得されてから治療を開始いたしますので、お子様の反対咬合が気になっている方は、「千代田区の矯正歯科専門・末広町矯正歯科」までお気軽にご相談ください。