「不正咬合」という言葉を聞いたことはありますか?
普段生活している中ではあまり聞く機会はないですが、不正咬合とは歯並びや咬み合わせが悪い状態のことをいいます。
不正咬合は歯の生え方の問題だと思われている方もいますが、原因はそれだけではなく、顎の成長具合や幼い頃からの癖など、多方面からの影響を受けて発生します。
不正咬合は、咀嚼や発音などへの悪影響が心配されるほか、心身にさまざまな問題が生じる可能性もあるため、そのまま放置するのはおすすめできません。
そこでこの記事では、正常咬合と不正咬合の概要、不正咬合の種類別リスク、大人になってからでも歯列矯正をはじめるべき理由についてご紹介します。
歯並びや咬み合わせの悪さが気になっている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
正常咬合と不正咬合の概要
通常の場合、ヒトの歯は永久歯が32本、乳歯は20本あり、上顎と下顎の歯槽骨にその半数ずつが馬蹄のように並んでいます。
そして上下の歯が咬んだときに接触した状態を咬み合わせといい、上下の歯がバランスよく均一に咬み合うのが理想です。しかし、そのような歯並びと咬み合わせをもつ方はあまり多くないのが実情です。
ここではまず、正常咬合と不正咬合の概要についてご紹介します。
正常咬合とは
正常咬合とは、咬み合わせが正常な状態のことです。上下の歯が咬み合う力のバランスが取れており、顎の関節や筋肉、歯、骨に悪影響がおよびにくい状態がよい咬み合わせといえます。
以下は、正常咬合のチェックポイントです。
- 奥歯で咬んだときに、上下の前歯の真ん中の線(正中線)が一致している
- 咬んだときに上の前歯が下の前歯よりも2〜3mm前に出ている
- 咬んだときに上の前歯が下の前歯に2〜3mm被さっている
- 上下の歯がしっかりと咬み合い、一歯対二歯の状態で隙間なく咬み合っている
- 奥歯で咬んだときに左右の奥歯が左右均等にズレることなく咬み合う
上記の条件を満たす歯並びと咬み合わせのことを「仮想正常咬合」といい、多少基準から外れていても日常生活に支障が出ないことを「機能性正常咬合」といいます。
また、歯や顎の骨の大きさや形によって歯並びや咬み合わせは人それぞれ異なるので、その人にとって最善の状態である場合は、「個性正常咬合」と呼びます。
不正咬合とは
不正咬合とは、歯並びが悪い状態や上下の歯が正しく咬み合っていない状態、もしくはその両方のことです。口元の見た目が悪くなるだけでなく、咀嚼や発音など機能面でも悪影響が起こる可能性もあります。
以下は、不正咬合の原因の例です。
- 歯の数が生まれつき足りない
- 顎の骨の形が生まれつき悪い
- 上唇や舌のすじの異常
- 唇顎口蓋裂
- 虫歯が原因で抜歯をした
- 指しゃぶりなどの幼少期からの癖
- 口呼吸
不正咬合の原因は、大きく分けて先天的なものと後天的なものがあります。
年齢を重ねるにつれ、咬む力によって歯は前方に傾いてくるため、不正咬合が年々ひどくなってしまうケースも。
ただし、不正咬合かどうかを判断するには患者さん一人ひとりの個性や機能、年齢などを考慮し、仮想正常咬合にとらわれずに判断しなければいけません。
不正咬合の種類別リスク
不正咬合にはさまざまな種類があり、それぞれに原因があります。それと同様に、種類によって異なるリスクを伴う点に注意しましょう。
ここでは、不正咬合の種類とそれに伴うリスクについて、わかりやすくご紹介します。
上顎前突
上顎前突とは、いわゆる出っ歯のことです。
上の前歯、もしくは上顎の骨が前方に突出している歯並びや咬み合わせで、口呼吸になりやすいのが特徴です。また、見た目に現れやすいため、コンプレックスになってしまう方もいます。
以下は、上顎前突を放置することによるリスクです。
- 虫歯や歯周病で歯を失う可能性が高まる
- 乾燥によって口臭が強くなりやすい
- 前歯に外傷を受けやすい
- 顎関節症を引き起こしやすい
- いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクが高い
前歯が突出しているため口を閉めにくく口呼吸になりやすいことで虫歯や歯周病、口臭の原因になったり、犬歯など咀嚼の際に重要な役割をもつ歯の咬み合わせも悪いケースも多く、顎関節症になりやすかったりします。
下顎前突
下顎前突とは、いわゆる受け口のことです。
下の歯が上の歯よりも前に突出しており、咬み合わせが通常とは逆で下の歯が上の歯に被さる状態になっています。上顎前突と同様に、見た目に現れやすいため、コンプレックスに感じる方の多い不正咬合です。
以下は、下顎前突を放置することによるリスクです。
- 手術が必要になる可能性もある
- 虫歯や歯周病になりやすい
- 食べ物がうまく咬みきれない
- 滑舌が悪くなりやすい
- 口角炎になりやすい
- 歯茎が下がりやすい
下顎前突は、遺伝などの先天的な要因だけでなく、舌癖や口呼吸などの後天的な要因も大きく関係してきます。顎の正常な成長が阻害される可能性も高く、年齢とともに症状が悪化するケースも多いです。
叢生
叢生とは、歯並びがガタガタの状態のことです。
八重歯も叢生の一種で、前歯がねじれたりバラバラの方向に生えたりしており、さまざまな不正咬合の中でも最も多いとされています。
以下は、叢生を放置することによるリスクです。
- 虫歯や歯周病で歯を失う可能性が高まる
- 汚れが残りやすく口臭が強くなりやすい
- 咀嚼の効率が低下しやすい
- 顎関節症を引き起こしやすい
- 胃腸などへ負担がかかりやすい
叢生は歯並びがガタガタなため、飛び出した歯が口の中に当たって口内炎になりやすかったり、舌や頬を咬んだりするリスクが高まります。
また、このような状態のままでいると、長期間にわたる口腔粘膜への刺激によって、将来的に口腔がんのリスクまで高まることもわかっています。
開咬
開咬とは、奥歯は咬み合っているが、前歯が咬み合わない状態です。いわゆるオープンバイトといわれる咬み合わせで、前歯ではうまく咬めません。
以下は、開咬を放置することによるリスクです。
- 虫歯や歯周病が悪化しやすい
- 歯に負担がかかり将来抜けてしまう可能性が高い
- 胃腸に大きな負担がかかる
- 顎関節症を引き起こしやすい
- 奥歯の知覚過敏になりやすい
- 発音に影響が出る可能性もある
- 咀嚼や嚥下に影響が出やすい
前歯が咬み合わないことで、奥歯に過度の負担がかかりやすく、すり減りも大きくなります。症状が強いと、歯の表面のエナメル質が削れて象牙質まで剥き出しになってしまうケースも。
また、顎の筋肉にも負担がかかるため、顎関節症になる可能性もあります。
交叉咬合
交叉咬合とは、上下の奥歯の咬み合わせが左右にズレている状態です。
いわゆるクロスバイトと呼ばれる状態で、左右の奥歯全体がズレている場合もあれば左右のどちらかだけがズレている場合もあります。
以下は、交叉咬合を放置することによるリスクです。
- 虫歯や歯周病のリスクが高まる
- 顎関節症になりやすい
- 胃腸障害が起こりやすい
- 咀嚼しにくい
- 発音しにくい
- 顔が歪んでしまう可能性もある
- 肩こり
交叉咬合は見た目にはほとんど現れないため、さほど不自由を感じない方も多く、放置してしまいがちです。しかし実は、体にさまざまな悪影響を及ぼしかねません。
重症になると顔が左右非対称になり、口の歪みが見た目に現れてしまう可能性もあります。
過蓋咬合
過蓋咬合とは、奥歯で咬んだときに上の前歯が下の前歯をすっぽりと覆ってしまう状態です。
ディープバイトとも呼ばれており、噛むたびに下の前歯が上の歯茎に当たってしまうため、気づかない間に歯茎を傷つけていることも。
以下は、過蓋咬合を放置することによるリスクです。
- 下の歯がすり減ってしまう
- 上顎前突を誘発する可能性もある
- 奥歯の被せ物が外れやすい
- 奥歯を失うリスクが高まる
- 顎関節症を引き起こしやすい
過蓋咬合は、骨格的な上顎前突を伴うケースもあり、下顎の成長を妨げてしまう可能性もあるため注意が必要です。
また、咬む力が強い場合は下顎のエラが発達して横に張り出したり、偏頭痛や肩こり、背中や腰痛なども伴いやすかったりとさまざまな影響が出てしまいます。
空隙歯列
空隙歯列とは、歯と歯の間に隙間が空いている状態です。
いわゆるすきっ歯と呼ばれる状態であり、上顎前突や下顎前突などを伴う場合もあります。不正咬合は、一般的に顎が小さいことで起こりやすいイメージもありますが、空隙歯列は顎のサイズが大きいことで起こりやすくなります。
以下は、空隙歯列を放置することによるリスクです。
- 虫歯や歯周病になりやすい
- すき間に食べ物がつまりやすい
- 滑舌や発音に影響が出やすい
- 口呼吸になりやすく口臭が強くなりやすい
- 食べ物がうまく咬みきれない
- 顎関節症を引き起こしやすい
- 肩こりなどの不調を引き起こしやすい
空隙歯列は歯と歯の隙間があいているため、空気が抜けて発音に支障が出るケースも多いです。とくにサ、タ、ラ行に影響が出やすく、相手が聞き取りにくい可能性も。
また、顔の印象が貧相になったりと、第一印象にも悪影響が出るケースもあります。
大人になってからでも歯列矯正をはじめるべき理由
日本でも徐々に一般的になってきた歯列矯正。
しかしいまだに歯列矯正は子どもが行うものだという印象をもっている方も多く、「大人になってから歯列矯正を始めても効果はあるのか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
上記でご紹介したように、不正咬合は心身に多くの悪影響を及ぼす可能性があるため、早めに対処すべき症状です。不正咬合のリスクをきちんと理解していれば、自ずと歯列矯正の重要性もわかっていただけるでしょう。
以下は、大人になってからでも歯列矯正をはじめるべき理由についてまとめたものです。
- 見た目のコンプレックスが解消される
- 虫歯や歯周病のリスクを低下させ、口腔内の健康を維持できる
- 成長がないため小児矯正よりも治療終了後の仕上がりが予測しやすい
- 胃腸の負担を軽減できる
- 全身のバランスが整う
矯正装置の見た目が気になる方は、近年人気のマウスピース矯正や歯の裏側に装置を装着する裏側矯正などを選択すると、仕事への影響も少なく済みます。
不正咬合があると、将来むし歯や歯周病で歯を失うリスクが通常よりも高くなります。大人の方こそ、自分の歯を1本でも多く残すために、歯列矯正不正咬合を治しておくことをおすすめします。
まとめ
正常咬合と不正咬合の概要、不正咬合の種類別リスク、大人になってからでも歯列矯正をはじめるべき理由についてご紹介しました。
不正咬合にはさまざまな種類がありますが、共通しているのは虫歯や歯周病のリスクが高まる点や機能面に問題が出る点です。放置してしまうとさらに重症化していくことも十分に考えられますし、場合によっては手術が必要になることも。
そうなってしまう前に、歯並びや咬み合わせが気になる方は、できるだけ早く歯科医院へ相談するようにしましょう。
千代田区の矯正歯科専門・「末広町矯正歯科」では、取り外し可能で見た目や装着したときの違和感が少ないマウスピース型矯正装置をはじめ、さまざまな歯列矯正の治療方法をご用意して患者様をお待ちしております。
歯列矯正は、正しく咬んで食べられるようにするだけでなく、虫歯や歯周病になりにくくしたり顔立ちまで整ったりするのがメリットです。
歯を少しでも長持ちさせるためにも、ぜひ一度「末広町矯正歯科」までご相談ください。