顔のおよそ3分の1を占める口元は、人の第一印象を左右する重要なパーツです。
とくに歯並びや咬み合わせは、子どもの頃から無意識に行っている口元の悪習癖による影響を受けやすく、弱くても長期間繰り返し力がかかることで、徐々に崩れていってしまいます。
矯正歯科などで行われるMFTトレーニングは、そんな口元の悪習癖を舌や唇などのトレーニングを通して改善するものです。最近では、メディアで紹介される機会も多く、多くの方が注目しています。
MFTトレーニングは、口を動かすときに使う筋肉にアプローチするため、歯並びや咬み合わせへの悪影響を予防することができます。正しい歯並びを維持したい方や歯列矯正を行っている方は、歯科医院できちんとMFTトレーニングの指導を受けることが重要です。
この記事では、舌を鍛える重要性とMFTトレーニングの詳細、効果についてご紹介します。口元の見た目が気になっている方や、MFTトレーニングに興味のある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
舌を鍛える重要性
突然ですが、舌はほぼ筋肉で構成されていることをご存知ですか?
ほとんどの方が、口の中に当たり前に存在する舌について深く考えたことはないでしょう。しかし実は、舌は人間が生きていくうえで避けられない「呼吸」「食べる」「話す」ことに深く関わっているため、健康にまで影響が及んでしまう可能性もあるのです。
舌の働きとして最初に思いつくのは、食べ物の味を感じる味覚という方が多いです。そして、滑舌などの言葉からもわかるように、話すことも舌が働いていることは予測できます。
では、咬むときはどうでしょうか。食べ物を咬み砕くのは歯の機能ですが、口に含んだ食べ物を歯の上に運んだり、咬んで細かくなった食べ物を塊にして喉に押し込んだりするのは、舌の役割なのです。
さらに、舌は歯並びにまで大きな影響を与えます。
なぜなら舌の筋力が衰えて正しい位置よりも下がってしまうと、舌と唇の位置関係が変わったり、舌が内側から歯列を押し出す力が正常に働かなかったりして、頬の筋肉に押される力とのバランスが崩れてしまうからです。
歯並びが乱れはじめると、さらに舌の使い方に問題が出てきてしまいます。それに伴って歯並びの状況も悪化してしまう悪循環が起きるため、早めに舌の筋力を鍛える必要があるのです。
MFT(口腔筋機能療法)トレーニングとは
MFTとは、日本語で「口腔筋機能療法」といって、口を動かす際に使用する筋肉にアプローチするトレーニング方法です。
口周りの筋肉は、年齢に関係なく鍛えられるため、子どもから高齢者までさまざまな年代の方の機能訓練に活用されています。
ここでは、MFT(口腔筋機能療法)トレーニングの目的や歯科医院での形態的評価、トレーニング方法についてご紹介します。
MFTトレーニングの目的
MFTは、歯並びや咬み合わせを悪化させる原因の一つである舌癖などの悪習癖を、筋肉への継続的なアプローチによって改善することを目的としているトレーニングです。
咀嚼時や嚥下時、発音時、安静時の舌や唇の位置を改善し、以下の項目の達成を目標とします。
- 口呼吸から鼻呼吸への切り替え
- 口腔周囲筋(舌と口周りの筋肉)を強化する
- 口腔周囲筋や舌の機能を適正な状態にする
- 正しい嚥下を習得する
- 悪習癖を改善する
MFTトレーニングは、歯並びが悪化するさまざまな原因にアプローチし、上記の目標を達成することで歯列の長期安定を図ります。舌や口唇、頬などの筋肉のバランスも整うため、顔貌にも審美的な効果がみられるほど変化する可能性も。
本来の目的とはずれてしまいますが、副次的な効果としてほうれい線やシワ、たるみなどの予防や改善も期待できます。子どもがMFTを行う場合はアンチエイジングを目的に、親御さんも一緒にやってみるとよいでしょう。
歯科医院での形態的評価
以下は、歯科医院で形態的評価が行われる項目の例です。
- 上下唇の突出度、離開度
- 下顎のオトガイ部の緊張
- オトガイ唇溝の有無
- 口唇閉鎖不全
- 口輪筋の過緊張
- 口唇のゆるみ
- 口角の下がり
オトガイとは、一般的に顎先のことです。顎や前歯の位置関係に問題がある場合、口が閉じにくいため、このオトガイ部に梅干しのようなシワができてしまいます。
歯科医院では口周りの筋肉の検査とともに舌癖の有無、口元の出っぱり具合や唇などの下がり具合、オトガイ部の形態を評価し、MFTを行う必要があるかを総合的に判断していきます。
MFTトレーニングの方法
MFTトレーニングは、口周りのことを熟知しているプロフェッショナルのもとで、正しい指導を受けることが重要です。トレーニング方法の種類は多彩であり、数十種類の中から患者さんの状態に合わせてトレーナーが選択し、トレーニングを進めていきます。
以下は、代表的なMFTのトレーニング方法の例です。
【エクササイズ】
- ファットタング・スキニータング:舌を平らにしたり尖らせたりする
- ティップアンドスティック:スティックを口の前で持ち、舌先を真っすぐに尖らせて強く押す
- ミッドアンドスティック:スティックを舌の真ん中に置き、舌に力を入れて上へ持ち上げる
【トレーニング】
- スポットポジション:スティックをスポットに当て、舌の正しい位置を覚える
- ポッピング:舌全体を上顎に吸い付け、ポンと音を出す
- スラープスワロー:舌を上顎に吸い付けてストローを咬み、口の横からスプレーで水を入れて吸い込みながら飲み込む
上記は、MFTのトレーニング方法のごく一部です。
舌の使い方を中心にトレーニングを行うケースが多いですが、口周りの筋力をアップするリップエクササイズや風船を使用して唇と頬の筋力増強を図るトレーニングなど、多彩な方法の中から必要に応じてチョイスします。
MFTトレーニングの効果
MFTトレーニングをはじめたての頃は、常にスポットに舌を置いておくことすらつらいという患者さんもいます。しかし、口周りの筋肉の機能が整ってくるにつれて、徐々に効果が出てきますので、地道に継続することが大切です。
一般的に、成長過程の子どもの方が効果を得やすいといわれていますが、大人でもきちんと継続していくと効果を得られるでしょう。
ここでは、MFTトレーニングの具体的な効果についてご紹介します。
口元に関する効果
MFTトレーニングでは、上記でご紹介したように、舌先をスポットにつけたり、水を飲み込んだりする訓練を行います。そのため、正しい咀嚼や嚥下が身に付くなど、口の中に対してさまざまな効果が現れます。
以下は、MFTトレーニングによって口の中に得られる効果の例です。
- 正しい咀嚼や嚥下、発音が身につく
- 歯に不用意な圧力をかけない習慣が身につく
- 不正咬合の予防
- 口周りの筋力のバランスがよくなり、歯並びが悪くなるのを予防できる
- ドライマウス(口の乾燥)を改善できる
- 乾燥による舌痛症の改善
- 入れ歯が安定する
- 虫歯や歯周病、口臭が予防できる
食べ物を前歯で咬みきって、小臼歯で細かく砕き大臼歯で潰すなどの基本的な歯の役割や、舌に食べ物を乗せて唇を閉じたまま咀嚼する、飲み込む際に上下の歯が合わさるようになるなど食事に必要な機能の回復が見込めます。
また、口周りの筋力バランスの悪さによって不明瞭だった発音も、MFTトレーニングの効果ではっきりとするケースも。通常の状態でも口がきちんと閉まるようになり乾燥を防げるため、虫歯や歯周病、口臭まで予防できます。
顔全体の効果
MFTトレーニングの効果は、口の中に対するものだけではありません。
トレーナーをつとめる歯科衛生士さんが、患者さんに指導しているうちに、いつの間にか自分も小顔になっていたという話もあります。
以下は、MFTトレーニングによって顔全体に得られる効果の例です。
- フェイスラインが引き締められて小顔効果が得られる
- ほうれい線やシワ、たるみの予防と改善
- 顎の筋肉の緊張が緩和され、エラが目立たなくなる
- 子どもの場合はいわゆるしゃくれの状態をある程度改善できる
- 口呼吸から鼻呼吸になる
MFTトレーニングにおいて、口呼吸から鼻呼吸にすることは非常に重要です。
口呼吸の場合は、舌が本来の位置よりも下に落ち込んでいることが多く、横顔を見ると顎がたるんでいるように見えたり、面長になったりする可能性もあります。
しかし鼻呼吸に変化するとたくさんの表情筋が呼吸に関与するようになるため、顔のエクササイズをしているのと同じような効果が得られるでしょう。
まとめ
舌を鍛える重要性とMFTトレーニングの詳細、効果についてご紹介しました。
MFTトレーニングでは、舌や口周りの筋肉を鍛えることで口元の機能を正常化し、歯並びや咬み合わせが悪くなるのを予防、改善できます。舌を含む、口周りの筋肉は、年齢とともに衰えていくため、そのまま放置してしまうとさらに状況は悪化していくでしょう。
MFTトレーニングは、子どもの頃の方が効果を実感しやすいですが、大人でも有効なトレーニングですので、できるだけ早くはじめることをおすすめします。
当院では、患者様のプライバシー保護と感染症対策の観点から、個室での診療を行っております。大人の方はもちろんお子様の診療も行っておりますので、ご家族揃って通院していただけます。
日本矯正歯科学会の認定医が多数在籍する矯正歯科専門医院ですので、歯並びについて不安なことがある方はぜひ一度千代田区の矯正歯科専門・「末広町矯正歯科」までご相談ください。