矯正治療は、矯正装置を装着することで歯を動かし、歯並びや噛み合わせを整えるものです。
近年、いくつかある矯正治療の中でも人気があるマウスピース型矯正装置。薄くて透明のマウスピースをつけるだけなので、見た目を気にせず治療ができるというメリットがあります。
マウスピース矯正を続けていくうえで気になることといえば、発音や滑舌、噛み合わせの悪化などです。発音や滑舌については、マウスピースに慣れてくれば気にならなくなってきます。
しかし、噛み合わせが悪化してしまった場合、そのまま放置してしまうと体の不調を招く原因になることがあります。手軽に歯並びを綺麗にできるマウスピース型矯正装置ですが、歯並びと噛み合わせは別の問題であるため、審美性を追求するあまり、噛み合わせがズレてしまうのです。
この記事では、マウスピース型矯正装置で噛み合わせが悪くなる3つの原因と対処法についてご紹介します。
噛み合わせとは
噛み合わせとは、上下の歯の接触関係のことです。ヒトは、上あごが頭蓋骨に固定されていて、下あごは複数の筋肉により頭蓋骨から吊り下がっています。これらの筋肉が収縮することで、顎関節を中心に下あごが動く仕組みです。
つまり、噛み合わせには歯と筋肉、顎関節、中枢神経系が関与するため、そのうちのどれかひとつでも問題があると噛み合わせに影響を及ぼすということです。
ここではまず、噛み合わせがよいとはどのような状態なのか、噛み合わせが悪いことで起こる体の不調についてご紹介します。
噛み合わせがよい状態とは
噛み合わせがよいとは、奥歯を軽く噛んだときに上下の歯が前後2〜3mm程度重なり、中央の歯と歯の境目が揃っている状態のことです。多くの場合、噛み合わせにズレがあり、完璧な噛み合わせの方はなかなかいません。
以下は、噛み合わせが悪い状態の特徴です。
- 上下の歯の重なりが深すぎたり浅すぎたりする
- 上あごと下あごが重なったときに前後が開きすぎている
- 上下の歯の左右が交互に並んでいない
- 上下の奥歯が合わない
矯正治療を行なって歯並びを整えると、噛んだときの噛み合わせがしっかりと接合するはずですが、技術のない歯科医師にかかってしまうと逆に噛み合わせが悪くなってしまう可能性があります。
マウスピース矯正治療中に噛み合わせが気になるときは、歯を噛んだ状態で鏡を見て「イー」と口を開き、噛み合わせがよいか確認してみましょう。
噛み合わせが悪いことで起こる体の不調
噛み合わせは、口腔内だけでなく全身の健康状態に悪影響を及ぼす場合があります。これは、噛み合わせが悪いと、重心をずらして全身のバランスを取ろうとするためです。
噛み合わせが悪いと、以下のような体の不調が起こるといわれています。
- 虫歯や歯周病
- 肩こり
- 頭痛
- 腰痛
- 耳鳴り
- めまい
- 鼻詰まり
- 目のかすみ
- 顎関節症
- 神経痛
- 不眠
どこの噛み合わせが悪いかによっても症状は変わってきます。左右均等に噛めない場合、徐々に身体の重心がズレて首の骨にまで影響が広がり、神経を圧迫して手足が痺れるなどの症状が現れるかもしれません。
マウスピース型矯正装置で噛み合わせが悪くなる3つの原因
本来マウスピース型矯正装置は、歯並びを綺麗にするために行うものですが、治療を行ったことで噛み合わせが悪くなってしまうこともあります。マウスピース型矯正装置では、とくに奥歯の噛み合わせが悪くなったと感じる方が多いようです。
治療をはじめてから噛み合わせが悪くなったと感じるときは、その原因に心当たりがないか考えてみましょう。
ここでは、マウスピース型矯正装置で噛み合わせが悪くなる3つの原因についてご紹介します。
取り外している時間が長い
マウスピース矯正装置は、1日に20時間以上装着することで、歯を徐々に動かして歯列を矯正するものです。そのため、マウスピースを取り外している時間が長かったり、取り外す頻度が高かったりすると、マウスピースと歯の状態にズレが生じて噛み合わせが悪くなる原因になります。
マウスピースを外してもよいのは、食事と歯磨きのタイミングのみです。食事が終わった後は必ず歯を磨いてからマウスピースを装着しなければいけません。
食事会や旅行中など、歯磨きをするタイミングがなく、マウスピースを外したままの状態になってしまうことも。マウスピース型矯正装置はある程度の自己管理能力に依存される歯列矯正方法なのです。
難しい移動をさせようとしている
マウスピース型矯正装置に限らず、多くの歯を一度に動かすような難しい移動をさせようとしている場合は、その経過で歯と歯が当たってしまう箇所ができ、噛みにくい状態になってしまうことがあります。
また、歯を動かしたい距離が長くなるほど、マウスピースをはめたときの違和感も大きくなり、噛み合わせが悪くなったと感じる方もいます。
マウスピース矯正は歯の移動距離が長かったり、難しい移動をさせようとしたりすると、最初に立てた計画の通りに治療が進まず、噛み合わせが悪くなる可能性があるのです。
そもそもマウスピース型矯正装置が向いているのは、歯を傾斜移動して動かせる場合や歯の重なりが6mm〜10mm程度までです。外科手術が必要なケースや歯の移動量が多いケースは苦手とされているので、治療をはじめる前にかかりつけの歯科医院できちんと相談しなければいけません。
マウスピースがズレやすくなっている
マウスピースは、患者さんの歯の形に合わせて作られますが、患者さんの歯の形によってズレが生じやすい場合もあります。その場合はそのまま作り直してもまた同じズレが出てしまう可能性が高くなり、放置すると噛み合わせの問題に発展する原因のひとつとなります。
またマウスピースは、歯にはめただけでは完全にはまっているとは限りません。
しっかりとはまっていない状態で過ごしていると、少しのズレが徐々に蓄積し、気がついたときにはマウスピースが歯に入らなくなってしまいます。こうなると、噛み合わせが悪くなるうえに治療期間が長引いて、無駄な時間を過ごすことになります。
マウスピース型矯正装置で噛み合わせが悪くなったときの対処法
マウスピースは、矯正や噛み合わせ、顎関節症など多くの治療に利用されている方法です。
しかし近年、矯正治療を専門的に行っていない一般歯科クリニックでもマウスピース型矯正装置を取り扱うことが増え、知識や経験が少ない歯科医師の治療を受けたことで、噛み合わせが悪くなってしまうケースが増加しています。
マウスピース型矯正装置は、知識と経験が豊富な歯科医師がマウスピースを製作することが大前提です。噛み合わせの乱れは、歯科医院での治療や生活習慣、ストレス、骨格などさまざまな要因が絡み合って起こります。
その原因をしっかりと把握して取り除かなければ、歯並びが綺麗になったとしても噛み合わせは悪くなったままになってしまいます。
マウスピース型矯正装置で噛み合わせが悪くなってしまった場合は、まずはかかりつけの歯科医師に相談し、その原因を突き止めてもらう必要があるのです。
マウスピースの装着の仕方や使い方に問題がある場合は、歯科医師の指示通りに装着方法を見直すことで噛み合わせが改善する場合もあります。状況に応じてアタッチメントを交換したり、一部だけワイヤー矯正をつけたりといった対処でも改善するでしょう。
マウスピースの製作には時間もお金もかかります。噛み合わせが悪いと感じたときは、早急に医師に相談し、自分でも着用時間などの使用上のルールを守れているか確認するようにしましょう。
まとめ
マウスピース型矯正装置で噛み合わせが悪くなる3つの原因と対処法についてご紹介しました。
マウスピース型矯正装置は歯並びを改善する治療という認識が強いですが、実は噛み合わせの治療にもなります。しかし、治療による歯の動きやマウスピースの使用方法によっては、噛み合わせが悪くなってしまうこともあるので注意が必要です。
噛み合わせが悪くなると、身体のさまざまな箇所の不調の原因になってしまいます。歯の本来の役割は、食べ物をしっかりと噛み、正しく発音できるようにすることです。
本来の歯の役割を果たせるように、マウスピース型矯正治療中に噛み合わせが悪くなったと感じたときは、すぐにかかりつけの歯科医院に相談するようにしましょう。
マウスピース型矯正装置をはじめ、各種矯正治療と虫歯治療などをワンストップで行っている「末広町矯正歯科」では、口腔内スキャナーiTero(アイテロ)を導入し、精密で快適な矯正治療を行なっています。
患者様一人ひとりに最良の治療計画を立て、患者様の意思とご要望に沿った診療を行うように心掛けています。
矯正治療の本当の目的は、歯を長持ちさせることです。歯並びを整えることで、将来歯を失ってしまう原因をできる限り少なくしていきます。
マウスピース型矯正装置を検討している方は、ぜひ一度「末広町矯正歯科」までご相談ください。