虫歯や歯周病、事故など、なんらかの理由で差し歯やブリッジなどの人工歯を入れることがあります。しかしその後、全体の歯並びを整えるために矯正治療を検討するケースも多いようですが、そこで気になるのが差し歯やブリッジの存在です。
近年、マウスピース型矯正装置の登場により、大人になってから歯列矯正を検討する方が非常に増えてきています。
マウスピース型矯正装置は、透明なマウスピースを装着することで徐々に歯並びを整えていく矯正治療の方法です。従来のワイヤー矯正では、すべての歯に器具とワイヤーをつけなければならず、どうしても目立ってしまうため、装置をつけることに抵抗があり治療を断念した方も多くいました。
マウスピース型矯正装置は、食事や歯磨き、大切なイベントなどのときは自分で簡単に取り外せる矯正装置です。装置によるストレスがかなり軽減されており、この方法を知って矯正治療を受けようと思った方も多いのではないでしょうか。
しかし、年齢を重ねるにつれて差し歯やブリッジを入れている方も増えてきますので、そのような場合でもマウスピース型矯正装置ができるのか知りたい方も多いでしょう。
この記事では、差し歯やブリッジがあってもマウスピース型矯正装置はできるのか、矯正治療の際の3つの注意点についてご紹介します。
人工歯を入れていてマウスピース型矯正装置を検討している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
差し歯やブリッジがあってもマウスピース型矯正装置はできる?
差し歯やブリッジは、失った歯の部分を補う治療です。両方とも天然の歯ではないため、そもそも矯正治療自体ができないとお思いの方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、差し歯やブリッジがあってもマウスピース型矯正装置をすることは可能です。差し歯が1本のみの場合はもちろん、数本が差し歯の状態やブリッジが入っている場合でも、歯並びと噛み合わせを整えられます。
ここではまず、差し歯やブリッジとはどのようなものなのかを詳しく解説し、マウスピース矯正が可能な条件と、マウスピース矯正で歯並びを治すメリットについてご紹介します。
差し歯とは
差し歯とは、虫歯の治療などで歯を削った後に被せる歯の被せ物のことです。歯科医療用語では「クラウン」と呼びます。歯の上部の傷んだ部分を削り、歯の根っこに健康な歯と同じ形の被せ物をします。
以下は、差し歯に使われる素材の例です。
- 金属
- レジン
- セラミック
- ジルコニア
この中で保険が適用されるのは金属とレジンです。これらの素材のメリットは、料金が安いところです。しかし、種類も少なく審美性が劣っているものも多いので、自然な白さを求める方には向いていません。
保険診療の場合は差し歯が取れたり外れたりしたときに、2年以内であれば無料で対応してもらえるなどのメリットがあります。
一方、保険適用外のセラミックやジルコニアの被せ物は、審美性も高く時間が経っても変色などが起こりません。
保険適用外の差し歯が取れたり外れたりした場合は、歯科医院によって対応がさまざまです。中には差し歯を再作成するときにもう一度同じ料金を請求する歯科医院もありますので、治療を受ける前に確認しておくとよいでしょう。
ちなみに、よく耳にするインプラントは、失った歯の部分に対して適用するものです。歯の土台となっている骨に根っこの代わりになるインプラント体を埋め込み、その上に被せ物をするものですので差し歯とは似ているようで違います。
ブリッジとは
ブリッジとは、失った歯の両隣にある歯を削り、そこを土台として被せ物をし、橋渡しのように人工歯をおく治療法です。健康な歯を2本以上削ることにはなりますが、歯の根っこがなくても人工歯を取り付けることができます。
以下は、ブリッジによく使われる素材の例です。
- 金属
- レジン
- セラミック
- ジルコニア
基本的に、使用できる素材は差し歯と同じです。保険適用内でブリッジを入れるときは、前歯から犬歯までには白い素材、それより奥には金属を使用します。
ブリッジは失った歯が何番目の歯なのか、連続しているのか、金属アレルギーはあるのかなどで使える素材や保険が適用される条件も異なるので、歯科医院でよく相談するようにしましょう。
近年、審美性を気にする女性を中心に奥歯にも保険適用外の白い素材でブリッジを行う方が増えています。審美性を気にするのか、料金を安く済ませたいのかなど、どのように治したいかを考えて素材を選ぶとよいでしょう。
歯根部が残っていることが条件
差し歯やブリッジなどの人工歯がある場合も、マウスピース矯正で歯並びを整えることができます。差し歯が1本のみのケースだけでなく、複数本の差し歯がある場合でもマウスピース矯正が可能です。
ただし差し歯の場合は、歯根部(歯の根っこ)が残っていることが条件となります。
マウスピース矯正は、マウスピース矯正をつけることで歯と歯の土台となる歯槽骨に外部から圧力をかけ、徐々に歯根部を移動させていく治療です。つまり、歯の根っこがなければ移動させることができません。
しかし、逆に考えると歯根部があれば歯冠部が天然歯であれ差し歯であれ、変わりなく治療できるということです。基本的には、差し歯をしたままの状態で移動させることになります。
ブリッジの場合は、そもそも欠損した歯の部分に歯根がないため、矯正の必要がありません。ブリッジのために削った歯を動かしたい場合は、いったんブリッジを外して矯正治療後に再度ブリッジを装着することになります。症例によっては、ブリッジの欠損している部分を歯が移動するためのスペースとして利用できるケースもあります。
マウスピース型矯正装置で歯並びを治すメリットとデメリット
マウスピース型矯正装置で歯並びを治すと、以下のようなメリットがあります。
- 矯正していることがわかりにくい
- スポーツや楽器演奏も可能(ワイヤー矯正でも可能だが、妨げになる可能性もある)
- 差し歯や被せ物があっても矯正治療ができる
- 金属アレルギーの方でも矯正治療ができる
- 食事や歯磨きなどが普段通りできる
- 口腔内を清潔に保てる
マウスピース型矯正装置は、従来の矯正器具と違って自分自身で簡単に取り外せるのが特徴です。しかしその反面、自分で装着時間を管理しなければいけないため、装着時間を確保できないと計画通りに治療が進みません。食事の時間以外のマウスピースの装着を習慣づけるように心がけましょう。
最近では、奥歯の大きな移動が必要な難しい症例にも対応できるようになってきていますので、ままでマウスピース型矯正装置では難しいといわれて諦めていた方にもおすすめの方法です。
差し歯やブリッジのある方がマウスピース型矯正装置をする際の3つの注意点
マウスピース型矯正装置は、取り外しができて日常生活にあまり支障なく矯正治療ができる方法です。しかし、場合によっては差し歯の差し替えが必要になったり、治療を中断しなければいけなくなったりする可能性があります。
ここでは、差し歯やブリッジのある方がマウスピース型矯正装置をする際の3つの注意点についてご紹介します。
ブリッジは橋渡し部分の切断が必要
ブリッジがある場合の多くは、両隣の歯との橋渡し部分を切断する必要があります。
なぜ切断が必要かというと、ブリッジ部分は複数の歯が一塊になっているため、ブリッジがつながった状態のままでは、スペースを確保できないため矯正ができないことがあります。
そのため、ブリッジの橋渡し部分を切断するか、ブリッジを外して治療を行う必要があります。その場合、治療後に作り直すことも覚えておきましょう。
治療の前後に差し歯を入れ替える可能性がある
矯正治療に向かない差し歯が入っている場合には、矯正治療前に差し歯をいったん取り外し、新しく作り直してから治療をはじめることがあります。
また、万が一差し歯が弱ってしまった場合、マウスピースの圧力に耐えきれず途中で欠けたり割れたりするものも。差し歯が耐えきれず折れてしまった場合は仮歯を入れて矯正治療後に新しく差し歯を作り直して入れることになるでしょう。
ブリッジも差し歯と同様に、治療前のブリッジの状態によっては、切断せずにいったん取り外して仮歯を作る可能性があります。
虫歯になると治療が遅れる可能性もある
マウスピース型矯正装置中は、1日20時間以上マウスピースを装着して過ごすので、唾液が十分に歯を洗えず、虫歯になりやすい口内環境となります。
そのため、差し歯やブリッジの有無にかかわらず、しっかりと歯磨きをすることやマウスピースの清潔を保つことが非常に大切です。
なぜなら虫歯の治療を優先しなければいけなくなる場合もあり、肝心の矯正治療が進まないからです。
予定通りに治療を終えるためにも、虫歯にならないように歯磨きや歯間ケアなどのプラークコントロールは丁寧に行うようにしましょう。
まとめ
差し歯やブリッジがあってもマウスピース型矯正装置はできるということ、矯正治療の際の3つの注意点についてご紹介しました。
差し歯やブリッジがあっても、マウスピース型矯正装置ができることをおわかりいただけたでしょうか。
差し歯やブリッジがある方は、どうせ無理だろうと矯正治療を諦めがちです。しかし、自信を持って人と接するためにも、矯正していることがわかりにくいマウスピース矯正で歯並びを整えてみてはいかがですか?
ただし、前述したように差し歯やブリッジの状態によっては、差し替えや作り直しが必要であることも覚えておいてください。
「末広町矯正歯科」では、患者様一人ひとりに最適な方法で矯正治療を行います。事前の説明を重視し、患者様がきちんと納得されてから治療を開始いたしますので、気になることがあればお気軽にお問い合わせください。
何かお困りのときやトラブルが発生したときは、LINEでもご相談いただけます。
差し歯やブリッジがある方でマウスピース型矯正装置を検討されている場合は、ぜひ1度千代田区の矯正歯科専門・「末広町矯正歯科」までご相談ください。