さまざまな理由から、歯科矯正を検討している患者様は年々増加しています。特に近年マスクが手放せない生活になってから、「この機会に矯正してしまおう!」と思った方もいるのではないでしょうか。
しかし、歯科矯正は健康保険の対象外なことが多く、高額なものがほとんどなのでなかなか踏み出しにくいですよね。そんな時に検討していただきたいのが、医療費控除という制度の利用です。
医療費控除とは、年間で使った医療費が一定以上になった場合に適用されるものです。年末の確定申告で申請し、承認されれば一定金額の所得控除が受けられ、医療費控除の還付金を受け取ることができる、という制度です。
「医療費控除」という言葉だけ聞くと、なんだか申請も難しそうに思えますよね。こちらの記事では、そのように思っている方や、医療費控除の利用を検討している方に向けて、仕組みや条件を解説していきます。
医療費控除とは
医療費控除という制度について、ここからはもっと詳しく説明していきたいと思います。
医療費控除とは、年間に10万円以上の医療費を支払った場合に適応となる控除のことで、かかった医療費の総額と年収に応じて、支払い済みの所得税・住民税のうちのいくらかが還ってくる、というものです。
本人の医療費だけでなく、生計を共にする家族、つまり生活費を共有している家族の医療費も合計することができます。しかし計算の際の所得の対象となるのは1人だけなので、より所得が多い方が申告すると、その分返還額も大きくなります。
医療費控除の金額は、所得合計が200万以上の人と以下の人で計算方法が分かれますが、どちらも最高200万円です。
医療費に含まれるもの
医療費控除における医療費には、
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- 治療費(検査費用、診察料、装置代、処置料、処方された医薬品などの費用、入院にかかった部屋代、食事代など)
デンタルローンやクレジットカードで分割支払いした治療費
通院のための交通費(公共交通機関を利用した場合)
これらが含まれています。反対に、ローンや分割支払いの際にかかる手数料や金利、自家用車で通院していた場合のガソリン代や駐車料金は含まれていないので注意が必要です。
計算方法
まず医療費控除の計算方法は、総所得が200万円以上か以下かで違います。どちらの場合でも控除額の上限は200万円とされています。また、医療保険の給付金や出産一時金などは差し引いて計算されます。
総所得が200万円以上の場合、支払い済みの医療費から10万円を超えた部分が対象となります。
次に、総所得が200万円以下の場合、総所得の5%を超える分の医療費が控除の対象となっています。例えば年間所得が150万円だったら、150×0.05=7.5なので、7万5千円を差し引いた額が対象です。
これらを計算式としてまとめると、次のようになります。
総所得が200万以上の方
医療費の総額−受け取った保険金や医療補助金の総額−10万円=医療費控除額
総所得が200万以下の方
医療費の総額−総所得×5%=医療費控除額
このように算出された医療費控除額に所得税率をかけて出てきた額が、実際に還付金として還付されます。
ここで注意していただきたいのが、控除額が同じだったとしても所得税率(年収)が違うと還付される金額が違う、という点です。しっかりと正しい確定申告をして医療費控除を受けていれば、還付金の額が間違っているということはないので、安心してください。
実際にいくら還ってくるのか
ここでは例を使って計算してみたいと思います。
年収400万円(所得税率20%)、医療費の総額35万円、保険金や医療補助金はなしのAさん
35万円−0円−10万円=25万円(医療費控除額)
25万円×20%=5万円(所得税の還付金)
25万円×10%=2.5万円(住民税の還付金)
つまり、合計で7万5千円還ってきます。
所得税は医療費控除の申告から数ヶ月後に口座に振り込まれますが、住民税は確定申告後、その年の6月からの住民税の金額で調整されるので、Aさんの場合現金として還ってくるのは5万円になります。
確定申告の流れ
医療費控除を受けるには、会社で年末調整を行っている方でも個人で確定申告を行わなければなりません。税理士さんに頼むという手もありますが、そこにかかるお金のことを考えると、ご自分でやられる方が多いと思います。
印鑑や申込者の口座番号、大人の歯科矯正の場合は診断書など、比較的入手しやすいものを除いて、確定申告の際に必要なのは、
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- 医療費控除の明細書
確定申告書
本人確認書類の写し
の3つです。まず医療費控除の明細書ですが、こちらは国税庁のサイトからダウンロードするか、直接税務署でもらうかの2つの方法で入手することができます。
明細書を記入するためには、病院にかかった時の領収書や、健康保険組合から届く医療費通知書が必要です。これらを紛失してしまった場合は再発行することもできますが、病院によっては追加料金がかかることもあるので、なるべく保管しておくと安心です。
次に確定申告書です。こちらも医療費控除の明細書と同じで、国税庁のサイトからか税務署に行くことで入手できます。
最後に本人確認書類の写しです。マイナンバー制度が導入されたことで、2016年分以降の確定申告には、本人確認書類の提示、または写しの添付に加えて、マイナンバーの記入が必要となっています。
マイナンバーカードを持っていない方は住民票や運転免許証等、あらかじめ提出する予定だった本人確認書類に加えて、他の身分証明書の提示や写しが必要となってしまいます。
しかし、2019年分からはマイナンバーカードがなくてもスマホから確定申告が可能なスマート申告という制度が開始されました。
書類が全て揃ったらこれらを税務署に提出します。方法は3つあり、
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- 直接税務署に提出しに行く
書類を郵送する
e-Taxを利用してネット申告する
どの方法を選んでも確定申告は行えますが、申告できる期間は毎年翌2月16日〜3月15日と決まっているので、気をつけてください。
確定申告は堅い上に難しい作業なので自分が1番やりやすい形で行えるのが良いですよね。ぜひ検討してみてください。
医療費控除の対象
ここから、気になっている方が多いであろう「歯科矯正は医療費控除の対象になるのか」について説明していきます。
まず、子供の歯科矯正は基本的に医療費控除の対象となります。一般的には中学生の年齢までは、歯や顎の適切な成長のために必要な治療であると判断されます。
ただし最終的な判断は税務署が行うので、不安がある親御さんは一度相談してください。
大人の歯科矯正が医療費控除の対象になるか否かは、その歯科矯正が何を目的としているのかによって変わってきます。
医療費控除の対象となるのは、歯科矯正治療が必要だと認められた場合です。つまり、噛み合わせの治療やその他の機能性の改善(咀嚼・発音など)のために行うのであれば対象となります。これは大人でも子供でもどちらにも当てはまります。
機能性に問題があるとはどういうことなのかというと、よく目にするのは開咬、下顎前突(受け口)、上顎前突(出っ歯)です。
これらはどれも、上の前歯と下の前歯がきちんと噛み合いません。それが原因で「食べ物を前歯で噛み切るのが苦手」だったり、「ある言葉や音の発音が苦手」といった日常生活に支障をきたす症状が出やすくなります。
このように診断がつく歯科矯正の場合、医療費控除の対象となります。
反対に審美目的、つまり見た目の改善のみが目的だった場合は医療費控除の対象ではありません。
自分の歯科矯正治療が医療控除の対象となるのかどうかは、患者様ご自身で判断しかねる部分だと思います。少しでも医療費控除を受けたいという気持ちがあれば、お気軽にご相談ください。
まとめ
ここまで医療費控除の対象や申請のやり方などについて説明してきましたが、いかがでしたか?
もしご不明な点がありましたら、私どもの方でも対応させていただきますが、管轄の税務署までご確認いただくのが確実かと思います。
歯科矯正治療はどうしても高額になってしまうものなので、考えている方は本記事を参考に、医療費控除が使えるのかどうかをご確認し、少しでも歯科矯正に対して前向きな気持ちを持っていただけたら幸いです。
当院では、ご来院されなくても歯科矯正について相談できるLINEでの無料相談を行っております。矯正の方法も豊富ですので、患者様の予算などをお伝えいただくことでご自身にピッタリの歯科矯正治療を行うことが可能です。
また初診相談も無料で行っておりますので、歯科矯正についてお悩みがある方はぜひ「千代田区の矯正歯科専門・末広町矯正歯科」まで、お気軽に足を運んでください。