小学校に入る頃になると、乳歯から永久歯へと徐々に生え変わり、歯並びが変化していきます。
歯並びの問題で歯科医院を受診する子どもの多くは、前歯が出ている、ガタガタに生えているなど、見てすぐにわかるような不正咬合(歯並びや咬み合わせが正常でない状態)がほとんどです。しかし、実は親御さんも気がついていなかったような大きな問題が潜んでいることも。
「逆側の永久歯は生えてきたのに、もう片方はまだ生えてこない」「乳歯が抜けてかなりの期間が経ったのに、まだ永久歯が生えてこない」
このような症状がある場合、「埋伏歯」の可能性があります。
埋伏歯の治療では手術が必要になるケースもありますが、子どものうちに通院を開始することで、大人になる前に歯並びを綺麗に整えられる可能性もあるため、少しでも不安がある場合は早めに受診すべきです。
この記事では、子どもの埋伏歯の治療で必要な手術と、子どものうちに通院を開始するメリット、埋伏歯の治療を受ける歯科医院の選び方についてご紹介します。
子どもの埋伏歯の治療で必要な手術とは
埋伏歯とは乳歯が抜けたにもかかわらず、歯茎や骨の中に埋もれたまま、自分の力で生えてこられない歯のことです。
一般的に、レントゲン撮影にて埋伏歯が確認された場合、埋伏した歯を歯茎から引っ張り出す「牽引」という矯正治療などが行われます。しかしその際、小手術が必要になるケースも多く、手術を行う可能性もあると知った親御さんは、不安になってしまうことでしょう。
そこでここでは、子どもの埋伏歯の治療で必要な手術についてご紹介します。
開窓術
開窓術とは、歯茎を切開して埋もれている歯の表面を露出させる処置のことです。歯茎を切開するため、小手術の一つに分類されますが、多くは局所麻酔で行う簡単な手術となります。
以下は、一般的な開窓術の手順です。
- 永久歯が埋伏している部分に局所麻酔を施す
- 歯茎を切開し、埋もれた永久歯の一部を露出させる
- 傷口を糸で縫合し、経過を観察
- 大体1週間程度で抜糸を行う
子どもの場合は、開窓術で歯茎を切開しただけで埋もれた歯が正常に生えてくる可能性もあります。しかし歯の生えている向きや周りの歯の状態によっては、歯茎を切開して開窓したあと、露出させた歯に矯正器具で牽引し、引っ張り出す治療を行う可能性があります。
開窓術では、術後麻酔が切れてくると少し痛むこともありますが、ほとんどの場合痛み止めが処方されるので不安になる必要はありません。2〜3日切開した部分が腫れる可能性もありますが、徐々に引いていくでしょう。
また、手術当日は体育や部活動などでの運動は控えていただき、抜糸完了までは念の為球技などの運動を控えるように指示される可能性もあります。そのような指示があった場合にはきちんと従い、傷が早く治るようにしましょう。
抜歯
埋伏歯の原因には、歯の本数が本来の数よりも多い「過剰歯」の場合があります。過剰歯は、スペースが足りず生えてこられないだけでなく、他の永久歯やその神経を傷つけてしまう恐れもあるため、歯科医院で抜歯を行うのが基本です。
歯の一部が見えており、他の永久歯と同じ向きに生えている場合は、すぐに抜歯を行います。しかし、歯茎の中に埋まっている場合は、歯茎を切開して抜歯を行わなくてはいけません。
過剰歯は1本の場合もあれば、複数本見つかる場合もあり、生え方や本数などによって抜歯の難易度が異なります。基本的には日帰りでの手術になりますが、外科的に大きな侵襲の可能性がある場合は、きちんと設備の整った病院へ入院して処置を行う可能性もあります。
抜歯を行う時期については、埋まっている歯の根っこの状態や患者さんの年齢などで歯科医師が判断するので、指示に従いましょう。
子どものうちに通院を開始するメリット
近年、口の中の健康に対する意識が高まり、年齢に関係なく歯科医院へ通院する方が増えてきています。中には子どもの頃から歯科医院が苦手だという方もいますが、勇気を出して歯科医院を受診したところ、重大なトラブルが見つかり「もっと早く受診しておけばよかった」という話もよく聞きます。
「永久歯がなかなか生えてこないけれど、大丈夫かしら」
そのような不安を感じている親御さんは、できるだけ早いうちに歯科医院を受診し、埋伏歯があるかどうか確認してもらうようにしましょう。
ここでは、埋伏歯の治療で子どものうちに通院を開始するメリットについてご紹介します。
抜歯をする確率を減らせる
埋伏歯は、発見が早ければ早いほど抜歯をせずに矯正治療で正常な歯列に戻せる可能性が高くなります。なぜなら、子どもの矯正治療は上下の顎の適切な成長を促進することで、歯が並ぶスペースを確保できるからです。
そのためには、乳歯が永久歯に生え変わりはじめるくらいの時期に歯科医院を受診し、埋伏歯の存在を確認。歯科医師の指示に従って適切な矯正装置を使用し、歯列を広げる治療を行います。
また、埋伏歯の状態に応じて開窓術や牽引を行い、歯茎に埋もれている永久歯を本来あるべき位置まで引っ張り上げます。
すでに永久歯が生え揃っている場合でも、適切な治療を受けることで抜歯をせずに埋伏した歯を歯列に戻せる可能性もあるため、「おかしいな」と感じたら早めに歯科医院を受診するようにしましょう。
永久歯列への影響が少なくて済む
埋伏歯の治療で、子どものうちに歯科医院を受診しておくと、永久歯列への影響が少なくてすみます。
とくに過剰歯が埋伏している場合は、咬み合わせや周囲の歯へ悪影響を及ぼす可能性が高く、一般的に抜歯になるケースも多いです。しかし、早いうちに対処しておくことでその影響を最小限に抑えることが可能になります。
また上記でもご紹介した通り、開窓術のみで埋もれていた永久歯が正常に生えてくるケースも多く、隣り合った歯が埋伏歯のある方向へ倒れ込んだり、スペースを奪ってしまったりするなどのトラブルを避けられる可能性もあります。
牽引の処置が必要になった場合でも、それと併用して歯列の拡大を行うことで、無理なく永久歯が生えるスペースを作り出せる確率も高まるでしょう。
全身への悪影響を予防できる
埋伏歯を大人になるまで放置してしまうと、歯列全体がガタガタになったり、咬み合わせに異常が生じたりする不正咬合になる可能性が高まります。
不正咬合は、以下のように全身へ悪影響が及んでしまう可能性もあります。
- 成長とともに顔が歪む
- 発音がしにくくなる
- 虫歯や歯周病の原因になる
- 顎の正常な成長を妨げる
- きちんと咬めないことによる消化不良
- 歯並びがコンプレックスになる
- 頭痛や肩こりの原因になる
上記のように、埋伏歯が原因の不正咬合は口の中だけでなく精神的な問題や全身の不調を引き起こす可能性もあるため、子どものうちに歯科医院へ通院し、適切な治療を受けるべきなのです。
埋伏歯の治療を受ける歯科医院の選び方
子どもに埋伏歯の可能性があり、歯科医院の受診を検討している親御さんの中には、どの歯科医院へ行けばよいのかわからずお困りの方もおられるのではないでしょうか。それもそのはず、一口に歯科医院といってもその中身はさまざまで、口の中の状況によって受診すべき歯科医院は異なります。
埋伏歯の可能性がある場合におすすめするのは、「矯正歯科専門医院」です。
矯正歯科専門医院とは、主に歯並びを整える歯列矯正を専門的に扱う歯科医院のことで、矯正分野での専門的な知識や高度な技術をもち、豊富な経験を積んだ医師の診療が受けられます。
ただ、矯正歯科専門医院は歯科医師があらゆる症例の経験を積み、高度な技術を習得するために年月を費やすことから、他の分野との並行が難しいという実情があります。
そのため、開窓術を必要とする可能性のある埋伏歯の治療を受ける際には、口腔外科と連携している矯正歯科専門医院を受診するのがおすすめです。また、矯正の専門医の資格をもっているかどうかも、あわせて確認するようにしましょう。
まとめ
子どもの埋伏歯の治療で必要な手術と、子どものうちに通院を開始するメリット、埋伏歯の治療を受ける歯科医院の選び方についてご紹介しました。
埋伏歯は、乳歯が抜けた後に永久歯がなかなか生えてこなかったり、一般歯科を虫歯などで受診した際に指摘されたりして見つかるケースも多いです。
埋伏している歯の状態によるものの、子どものうちに確認できれば、よりスムーズに治療を開始でき、大人になる前に綺麗な歯並びと咬み合わせを得られます。
場合によっては開窓術や抜歯などの小手術が必要となりますが、いずれも簡単な処置であり、それほど心配するようなものではありません。それよりも、埋伏歯を早期に発見して適切な治療を受けることが重要になりますので、埋伏歯の可能性がある場合は早めに矯正歯科専門医院を受診するようにしましょう。
当院では、大人の矯正治療はもちろん子どもの歯並びを改善するために、さまざまな装置をご用意して患者様をお待ちしております。
プライバシーと感染症対策を重視し、診療は個室にて行います。無料カウンセリングや歯並びシミュレーションも行っておりますので、「永久歯がなかなか生えてこない」「歯茎の上の方に歯が見えている」などの症状でお悩みの方は、ぜひお気軽に「千代田区の矯正歯科専門・末広町矯正歯科」までご相談ください。