子どもの顔を見ていて「なんだかずっと口が開いている」「話し方が舌足らずな気がする」と思ったことはありませんか?
そのような症状は、口呼吸や舌で歯を押し出してしまう癖や下唇を咬む癖など、さまざまなことが関係して現れています。また、喉や鼻の疾患が関係しているケースも多く、これらは歯並びや発音にまで影響してしまうため、子どものうちに治しておきたい症状です。
そのような場合、一般的には歯列矯正を行いますが、それと同時に舌の癖を治す「MFT」というトレーニングも並行して行うケースも多くあります。
ただ、歯並びを整える歯列矯正は、保険適用で治療を受けられるケースが非常に少なく、治療費用が高額になりがちです。それと同様に、MFTも基本的には保険が適用されず自由診療になってしまうケースが多くなります。
歯科医院でMFTを勧められた親御さんの中には、本当に保険が適用されないのか、また、費用はどのくらいかかるのか不安に感じている方もいることでしょう。
そこでこの記事では、MFTの詳細、保険適用になるケースと費用相場、インビザラインファーストとの併用がおすすめの理由についてご紹介します。
MFTとは
気がつくと口がポカンと開いてしまう、鼻ではなく口で呼吸をしているなど、子どもの口周りで気になる動作はありませんか?
これらは放置してしまうと歯並びだけでなく、むし歯になりやすくなったり、風邪を引きやすくなるなど、体のさまざまな部分に悪影響をおよぼすため、早めに対処する必要があります。
そこで行いたいのが、MFTというトレーニングです。ここではまず、MFTとはどのようなものなのか、その詳細についてご紹介します。
口周りを正しく機能させるトレーニングのこと
MFT(oral Myo Functional Therapy)とは、日本語で「口腔筋機能療法」のことです。
正しい舌の動きや口周りの筋肉の動きを覚えて習慣化し、正しく機能させるために訓練を行います。
本来、ヒトはリラックスした状態において舌は上顎のスポットと呼ばれる位置についていて、口唇をしっかり閉じているのが理想の状態です。MFTを行うことでその状態を維持し、正しく飲み込んだり、発音したりできるようになります。
症状によっては、歯列矯正をせずにMFTのみで不正咬合(歯並びや咬み合わせが正常でない状態)をある程度改善できるため、歯科医師に勧められた場合はぜひ受けていただくとよいでしょう。
不正咬合の原因の多くは、口呼吸や姿勢の悪さ、舌の悪癖、口周りの筋肉の成長不足です。
MFTで継続して筋肉へアプローチすることで、成長してから本格的な歯列矯正をする必要がなくなったり、抜歯を避けられたりする可能性もあります。また、歯並びや咬み合わせだけでなく、全身を健康に導くことにもなります。
MFTで期待できる効果
MFTは、口の周りの筋肉に不調和がある場合に推奨されるトレーニングです。具体的には、指しゃぶりの頻度が多い場合や舌を前に出す癖、常に口が開いている場合などにトレーニングを受けます。
以下は、MFTを受けることで期待できる効果の例です。
- 発音が改善する
- 口腔周囲筋のバランスが整う
- 安静時の舌や唇の位置が改善する
- 歯列矯正後の後戻りが軽減する
- 正しい嚥下、咀嚼ができるようになる
歯はしゃべったり唾を飲み込む度に唇や頬の筋肉、舌による圧力を受けており、筋肉の働きに偏りがあると歯並びまで乱れる恐れもあります。MFTを行うことによって口腔機能が正しく改善されると、頬や舌の筋肉が正常に発達し、歯が綺麗に並ぶケースも。
ただし、歯並びや上下の顎の位置関係を改善できる治療ではないため、歯並びや顎の形態を改善する必要がある場合には歯列矯正と並行して行う必要があります。
適応年齢
MFTは、筋肉の異常な癖を改善する目的で行われるトレーニングです。そのため、年齢が若いほど効果が出やすいとされており、一般的に5〜10歳程度の子どもが最適応年齢とされています。
大人になってからでも効果はありますが、すでに骨がしっかりと固まっていることや年齢的に適応能力が低くなっていることから、子どもよりも改善は難しいでしょう。
しかし、毎日コツコツとトレーニングを行うことで、効果は出ますのでぜひトライしてみてください。
MFTが保険適用になるケースと費用相場
冒頭でもご紹介した通り、MFTは基本的に保険適用外の自由診療で受けられる治療です。しかし、一部の症例では保険適用になるケースもあり、費用の負担が軽減するケースも。
では、一体どのような場合に保険適用でMFTを受けられるのでしょうか。ここでは、MFTが保険適用になるケースと費用相場についてご紹介します。
MFTが保険適用になるケースとは
MFTは、「口腔機能発達不全症」という疾患の場合、保険適用で受けられます。
口腔機能発達不全症は、平成30年4月より保険導入された疾患です。普段ヒトが当たり前に行っている、「食べる」「話す」「呼吸する」機能が正常でない状態のことをいいます。
近年、口腔機能発達不全症と診断される子どもが増加傾向にあり、症状の重さや年齢によってはMFTを行う必要があります。
以下は、口腔機能発達不全症の診断基準です。
- 年齢が15歳未満
- 咀嚼機能、嚥下機能、食行動、構音機能、栄養(体格)、その他の中で2項目以上に異常が見られる
口腔機能発達不全症は、子どもと親御さんの生活習慣を踏まえて最適だと考えられる方法で治療が行われます。MFTは、主に咀嚼時の舌運動不全がある場合に行われ、正しい舌の動きができるようにトレーニングを行います。
口腔機能発達不全症の詳しい情報が知りたい方は、以下を参考になさってください。
→口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方(令和2年3月 日本歯科医学会)
MFTの費用相場
MFTの費用相場は、3,000〜10,000円程度です。
口腔機能発達不全症と診断された場合は保険適用内でトレーニングを受けられますが、そうでない場合は自由診療になります。歯科医院によって費用にばらつきが出るため、事前に確認するとよいでしょう。
また、MFTは歯列矯正と並行して治療を行うケースも多く、その場合はMFTを無料で受けられる歯科医院もあるようです。
MFTとインビザラインの併用がおすすめの理由
インビザラインとは、近年ワイヤー矯正に代わって一般的になりつつある、マウスピースを使用して歯を動かしていく矯正装置のことです。
透明のプラスチックでできており、歯列矯正を行っていることが周囲にわかりにくいだけでなく、違和感や痛みも少ないのが特徴です。
インビザラインは、食事や歯磨きなどの際は取り外せる点がメリットの一つでもあります。
従来のワイヤー矯正では取り外しができません。そのため、口の中に矯正装置があることに慣れるまではMFTのトレーニングがしにくい、装置が舌にあたって痛んだり出血したりするなどのトラブルもありました。しかし、インビザラインには金属が使用されていないため、装置をしたまま快適にMFTを行えます。
また、インビザラインにはいくつかの種類があり、6歳程度から使用できるインビザラインファーストや、永久歯が生え揃うと使用できるインビザライン・コンプリヘンシブパッケージなどがあります。
MFTを行うことで、歯列矯正後に歯が後戻りしてしまうことも防げるので、治療後も美しい歯並びを維持できるでしょう。とくにインビザラインファーストは、歯並びを整えるだけなく顎の正常な成長をサポートする効果もあるため、MFTと併用することで不正咬合の原因を根本から改善できます。
まとめ
MFTの詳細、保険適用になるケースと費用相場、インビザラインファーストとの併用がおすすめの理由についてご紹介しました。
MFTは、主に後天的な理由で筋肉の不調和が起こっている場合に、舌や口唇、頬などの口腔顔面筋のトレーニングを行います。ほとんどの場合は保険適用外の自由診療で行われますが、口腔機能発達不全症などの一部の場合には保険が適用されます。
MFTは、歯科医院で教わったトレーニングを自宅でも毎日決められたセット数こなす必要がありますが、毎日行うことで徐々にうまくできるようになり、自ずと効果も現れるでしょう。
また、子どもだけでなく大人でもある程度の効果を期待できますので、気になる方はぜひ歯科医院へ相談に行ってみることをおすすめします。
当院は治療の事前説明を重視しており、患者様がきちんと納得されたうえで治療を受けていただける矯正歯科専門医院です。
歯列矯正が必要だと判断した場合は、理想の歯並びを3Dでイメージし、治療計画を始めから終わりまで丁寧にご説明いたします。
また、当院より歩いて5分のところにある「秋葉原総合歯科クリニック」と連携し、虫歯治療やホワイトニングなどさまざまなご希望に対応できるシステムとなっています。ぜひお気軽に千代田区の矯正歯科専門医院・「末広町矯正歯科」までご相談ください。